新型コロナウイルスの感染者をめぐる、ヨドバシカメラ(東京都新宿区)の対応がインターネット上で物議を醸している。同社は9日、『ヨドバシカメラマルチメディア横浜店(横浜市)における同店滞在者の新型コロナウイルスの感染について』という告知文を公式ホームページ上にアップした。感染発覚から告知掲載、営業休止に至るまでの期間が大きく開いていたこともあり、Twitter上には怒りの声が溢れている。
7日に感染判明も営業継続?
同社の告知文を引用する。
「当4月9日に、弊社『ヨドバシカメラマルチメディア横浜店(以下同店)』(横浜市西区北幸1丁目)に、販売商品のメーカーから販売促進員として同店の売り場に来て前3月まで活動されていた方の1名が、PCR検査で新型コロナウイルスの陽性反応が出た、という事実が判明いたしました。
弊社は、お客さまと従業員の安全を最優先に考え、あり得る感染の拡大の抑止に努めるため、所管保健所などと連携し、上記の陽性反応がでた感染者が滞在していた売り場及び同店において、現時点で次の対応を取っております。
・同売り場と同店における感染者の行動歴ならびに感染者との濃厚接触者の調査
・濃厚接触の可能性のある同店従業員及び同店の長時間滞在者への本日から2週間の自宅待機指示及び要請、並びにその者らの健康に関する経過確認
・同店の消毒作業の実施
・同店を当分の間、休業とすること
※その他についても保健所の指示に従い対応してまいります。
当感染者の方は3月末を最後に同店には来ておりませんが、翌4月1日に発熱の症状があり、4月2日に医療機関へ受診。その後4日にPCR検査を実施、4月7日に新型コロナウイルス陽性判定が出たという経緯です。
今後も、同店外での可能性のある感染の拡大の抑止と安全確保を最優先に、関係各所と連携し対応してまいります。何卒ご理解のほどお願い申し上げます。
また、休業中の同店の再開につきましては現在のところ未定でございます」
同社が告知を出す8日以前から、SNS上では「会社は感染を知っていながら公表を隠している」との指摘も以下のようになされていた。
「私はヨドバシの従業員です。営業妨害をする気は有りませんが、事実を広めたいのでアカウントを作成しました。先日、ヨドバシ横浜でコロナ感染者を確認していますが、公に出ないように隠蔽しています。ヨドバシ横浜は緊急事態宣言にも関わらず、本日も通常営業しております」(原文ママ、以下同)
「ヨドバシマルチメディア横浜でコロナ感染の方が出たってお話。事実です。主人が同じフロアで働いていたので、濃厚接触者ではないものの自主的に自宅謹慎中です。何も言わずに通常営業してるなんて信じられない。拡散されて知れ渡って欲しい」
ヨドバシ「感染はメーカーの販売担当従業員。隠蔽の事実はない」
こうした指摘は事実なのか。ヨドバシカメラの広報担当者は次のように否定する。
「弊社としては感染者が出たことを隠蔽しようとした事実はありません。感染したのはメーカーの販促担当の従業員の方で、ずっとお仕事を休まれていました。その結果、7日に検査結果が出てから、当該社員の方が所属している企業様を経由して弊社に情報が上がってきたため、事実関係を確認するまでに24時間ほど時間がかかってしまいました」
大手家電メーカー「現場の運用は知らない」
ヨドバシカメラに商品を納品している大手家電メーカーの販売・営業部門社員は次のように話す。
「今回の一件で、感染した販売がマスクをしていなかったなどとインターネットで指摘もあったようですが、ヨドバシさんは販売員にマスクを配布するなど、感染症対策を取っていると聞いていました。
実際のところ、店頭の販促担当者は弊社やグループ会社の社員ではなく、仲卸の協力企業さんが雇った派遣やアルバイトの方が多いです。量販店さんとしては、一日だけでもお店を閉めれば大きな赤字になるので慎重になるのはわからなくはありません。商品のブランディングに関わることなので、量販店さんには感染予防に努力して頂きたいと思っています。
メーカーとしては感染症対策を徹底しています。ただ正直、実際の販売現場がどうなっているかまではわかりません。我々も多くの社員がテレワークで、外出を自粛しています。家から指示を出しているだけなのです。通常時であれば、量販店回りなどをしている営業担当も会社として自粛しているので、どうなっているかはわからないと思いますよ」
どこか他人ごと感のあるメーカーの社員と、実際に新型コロナウイルス感染症の脅威に直面している現場販売員や消費者との危機感に乖離を感じる。仮に今後、量販店を中心にしたクラスターが発生したら責任の所在はどこにあるのか。感染した販売員個人に責任を負わせるようなことがあってはならない。
(文=編集部)