ファナックはCEO、COO職を新設
ファナックは47歳の山口賢治副社長が6月下旬に社長に昇格する。創業家出身で67歳の稲葉善治社長は代表権のある会長に就く。社長交代は13年ぶり。新たにCEOとCOO職を設け、それぞれ稲葉氏と山口氏が兼ねる。
CEO、COOに加え、CTO(最高技術責任者)、CFO(最高財務責任者)も置く。CTOには内田裕之副社長、CFOには権田与志広副社長が就き、稲葉体制を支える。
稲葉氏は、ファナックの実質創業者である稲葉清右衛門名誉会長の長男だ。さらに稲葉氏の長男の稲葉清典氏は専務でロボット事業本部長である。
山口氏は製造管理のエキスパートで山梨県忍野村にある本社工場の工場長を務めたほか、13年から製造統括本部長に就いていた。ロボットを使った工場の自動化を進め、39歳で専務に就任し、早くから社長候補と目されており、その意味では順当なトップ交代といえる。
キヤノンは御手洗院政が続く
キヤノンは3月末、63歳の真栄田雅也前専務が社長に昇格したが、80歳の御手洗冨士夫会長兼CEOが経営のカジ取りをする体制に変わりはない。
御手洗氏のトップ在任期間は21年。キヤノンの成長は長期にわたって頭打ちとなっており、16年12月期の純利益は9%減の2000億円を見込んでいる。当初は4%増の2300億円を予定していたが、急激な円高の影響もあって2000億円の達成すら難しそうだ。つまり、通期で2期連続の最終減益となる。東芝から買収する東芝メディカルシステムズは「連結子会社になる時期が未確定」なため、この業績予想には入っていない。
御手洗氏は1995年から社長、2006年に会長となった。10年に経団連会長を退任後、経営の第一線に返り咲き、12年から社長を兼務してきた。16年12月期から始まる中期経営計画では企業向け事業の強化を掲げる。監視カメラや商業印刷といった新規事業へ注力し、成長を軌道に戻したいとしている。新中期経営計画の5年間、御手洗氏はトップであり続けるとみられている。社長の椅子は確かに譲ったが、85歳までトップを続けると宣言したようなものだ。
富士フイルムとキヤノンによる東芝メディカルシステムズ争奪戦
キヤノンは東芝と、東芝メディカルを6655億円で買収する契約を結んだ。争奪戦に敗れた富士フイルムの社長交代会見で古森CEOに対して、東芝メディカルに関する質問が浴びせられるほどの激しい闘いだった。
東芝メディカルの企業価値は「最大で5000億円。激しい競合の末にキヤノンは高値で買うことになった」(外資系証券会社のアナリスト)といわれている。
業績の伸び悩みをなんとか打破したいと考えている御手洗氏の焦りが、“高値掴み”に走らせる結果になったと見る向きもある。
東芝メディカルの争奪戦で激しく対立したキヤノン、富士フイルム双方の社長が交代したが、いずれも会長兼CEOが実権を握り続ける体制は不変だ。両社の社長交代に因縁のようなものを感じる。
(文=編集部)