「客に親切すぎる&品揃え豊富すぎる」店が閉店、売上日本一だったダイエー碑文谷店も閉店
今回の閉店に際し、テレビ番組やネットニュースなどでも報道されたため、惜しむ声が数多く上がった。
筆者は、同店の30年来の買い物客であり、毎年必ず視察を繰り返していた。近隣の住民に話を聞くと、「ひと通りの品揃えはあるが、自分が欲しい商品がなく、安くもないので利用しなくなった」といった声が少なくなかった。これは同店に限ったことではなく、現在のGMSの状況を端的に表している。
筆者も30年前、新生活を始めるにあたり、家具や生活用品を手頃な価格で買い揃えられる同店を利用したが、今やネット通販の圧倒的な品揃えの中から、安くさまざまな商品を購入できる。また、「家具などの大物は現物を見てから購入したい」という人でも、IKEAなど「カテゴリーキラー」と呼ばれる、特定分野の商品のみを豊富に品揃えし、低価格で販売する小売店で購入することが一般的になっている。
そんな流れを意識していたのかダイエー碑文谷店では、1980年代に日本一の売り上げを誇った家電売場を廃止し、家電量販店のヤマダ電機をテナントとしていち早く取り入れた。しかし、売場面積が狭く品揃えは中途半端で、ネット通販の隆盛には太刀打ちできなかったようだ。
閉店セールの3カ月前に買い物に行ったところ、多層階で展開している同店は、1階の食料品売場、2階の食料品とビューティヘルスケア、7階のフードコート・ゲームコーナー以外は、上層階に行くほど客が少なかった。
メインとなるシニア客は、日常の買い物では700メートル以上は歩かないと言われている。また多層階にわたる店内では、魅力的な品揃えやテナントがない限り上階への誘客は難しく、旧来の多層階でのGMS形態の限界を如実に表している。
15年1月からダイエーはイオンの完全子会社となった。18年までにすべての看板がイオンに替わり、ダイエーの痕跡はなくなる。ダイエー碑文谷店も、今年12月にイオンスタイル碑文谷としてリニューアルオープンする予定だ。
碑文谷エリアは、富裕層のアクティブシニアが増えている。新しい客層に合わせた、新しいライフスタイルを提案する店舗展開が予想され、今後が期待される。
ダイシン百貨店もダイエー碑文谷店も、肉・魚・野菜の「生鮮三品」に強い地元食品スーパーの「オオゼキ」や、コンビニエンスストアの跡地に居抜き出店した食品ミニスーパーの「まいばすけっと」の展開により、お客が流れて苦戦したと指摘されている。
GMS業態に未来はあるのだろうか。今後の展開を注視していきたい。
(文=法理 健/流通ジャーナリスト)