ソニー頼みの綱・半導体事業、地盤崩壊の危機…世界1位陥落か、また市場変化に乗り遅れ
CMOSセンサの競争のルールが変わる
従来、CMOSセンサは、主としてデジカメやスマホに搭載することを目的に開発されてきた。一言でいえば、「人が見えるモノをより美しく見せる」ための開発であった。したがって、波長は人が識別できる可視光のみを対象とした。精細度、感度、ダイナミックレンジも人が識別できる範囲までであり、人が識別できるフレームレートで、CMOSセンサは開発されていた。
しかし今後は、自動運転車や監視カメラなどを主用途にした開発が主流になる。つまり、見る主体が「ヒトからマシンへ」変更されることになる。したがって、人が見えない距離や温度も見ることになるし、可視光以外も見る対象になる。また、精細度、感度、ダイナミックレンジ、フレームレートも、マシンが「見ることができる」範囲に拡張されることになるだろう。
ソニーはパラダイムシフトに対応できるか
スマホ用CMOSセンサ技術では、ソニーが他社より2~3年先を走っていた。ところが画素ピッチが1μmになり、可視光の回折限界に達した。そのため、サムスン、オムニビジョン、オンセミなどの技術がソニーに追いつき始めた。ギャラクシー・コアなどファブレスの生産委託先のファンドリーTSMCの技術も格段に向上した。
さらに、スマホ用CMOSセンサの成長が鈍化し、自動運転車、監視用、ロボット用など産業用CMOSセンサが急成長し始めた。CMOSセンサが見る主体は、「ヒトからマシン」へ変わろうとしている。つまり、CMOSセンサ市場にパラダイムシフトが起きるのである。
スマホ用CMOSセンサの単価は2~3ドルだが、車載用は10~30ドルになるという。すると、市場規模は今後、産業用が民生用を上回るだろう。これまでソニーが築いてきた地盤が崩れる可能性が高い。その結果、CMOSセンサのプレーヤーの勢力図が、今後変化するかもしれない。
ソニーが生き延び、さらに成長するためには、このようなパラダイムシフトに適応できるか否かにかかっている。
(文=湯之上隆/微細加工研究所所長)