大塚家具は2016年12月期業績予想の下方修正を発表した。営業利益は前期実績が4億円の黒字で、16年12月期の従来予想ではそれを上回る5億円だったが、今回一転して15億円強の赤字に修正した。これはリーマンショックの影響で14億円の営業赤字に陥った09年12月期をも超える赤字幅である。最終損益も6年ぶりの赤字に転落すると修正された。本稿では以下の2点について検証する。
(1)一転しての赤字予想となった原因は何か。
(2)大塚久美子社長の実父で前会長でもあった大塚勝久氏が昨年創業した匠大塚社が、大塚家具のビジネスを奪ったのか。
赤字転落の原因は売上高の急落である
赤字転落の原因は売上高の急落である。トップが落ちればボトムは大きく損なわれる。今回の修正発表では、今期の売上高は前期比42億円減の538億円と、マイナス7%強の落ち込みを予想している。過去15年間で最低になる売上見込みだ。この数字だけを見ると、昨年の株主総会で公然と対立して実父の元会長を追放してまで得た経営権を、久美子社長は生かしきれなかったと指摘されても仕方がない。
今期の通期売上を下方修正したが、「これで終わるのか」という不安は残る。というのは、年が明けてからの月次の売上傾向がジリ貧で始末が悪いのだ。1月から既存店の減少傾向が続いており、引越しシーズンだった稼ぎ時の3月には前年同月期比11.8%減となってしまった。あわてて5月は「大感謝会」と銘打った集客策を実施したものの、今年は不発に終わり、同46.2%減とほぼ半減した。
「売れないポジション」へ自らシフト
家具業界での勝ち組はニトリとイケアの低価格路線と、カッシーナ・イクスシーの高級路線である。大塚家具では勝久氏が高級路線を選択して、順調に成長した。しかし、富裕層は無限に存在しない。その証拠にカッシーナ・イクスシーの年商は100億円強で、店舗数は大都市に4つにとどめている。大塚家具は現在17店舗だが、高級路線としては成長限界にきていて過大な店舗数だ。一方、ニトリは391店を展開している(5月末現在)。
久美子社長の経営で、大塚家具は低迷している。戦略的には勝久氏の高級路線を否定して中級路線に打って出ようとしていると理解できるが、それが徹底しないか、消費者にうまく訴求できていない。パブリシティ的には昨年の経営権争奪合戦からこれ以上ない注目と露出があるが、それを生かす知恵が足りない。つまり戦略がなく、的が外れている。