髙松 たしかにそういう面もありますね。作家さんを集めてこういう企画やりましょうといっても、普通はアンソロジーだと思います。でも、みんなでもっとしばりを強くして、同時掲載でわくわく感を出そうかと(笑)。
――たとえば、この企画を電子書籍で出そうという話にはならなかったのでしょうか?
髙松 「螺旋」という企画は、同じルールの中で作家がそれぞれの作品を書きます。1つの作品だけを読んでも面白いし、同時並行で読んでも面白いと思ってもらえるように意図した企画で、ある意味、「お祭り」だと考えています。当然「なんで電子書籍ではダメだったのか」という話も挙がりました。我々の中では、「螺旋」のような「お祭り」的な企画の場合、電子書籍では個別の作品ごとに読まれてしまい、パートパートで消費されてしまう懸念がありました。
――電子書籍では「螺旋」というパッケージ感が薄まる、と。
髙松 はい。そういった議論があったため、「螺旋」は紙媒体だからこそやれるよね、という話でまとまりました。中央公論創業130周年の「お祭り」でもあるし、「うちは、こういう楽しいこともやってますよ」とアピールする意味も含めて、「螺旋」の演出を考える上では、紙だったというわけです。もちろん、電子書籍での展開は考えます。やはり、20代の読者層は電子書籍と親和性が高いのは事実で、検討せざるを得ません。
――「お祭り」という感覚は、小説誌っぽくなくて興味深いですね。SNSやインターネットでの展開で特に意識されたことはありますか?
髙松 これはうちの若い編集者のアイデアなんですけど、セールスにあたってプロモーション的に「フェス」っぽくやろうと。フェスの告知って、最初はヘッドライナーとして大物アーティストを発表しますよね。そこから少しずつ、参加アーティストを発表してゆく手法です。今回、我々もそのようなノリでやりました。順次情報公開をしていって、リアルタイムで期待感を持ってもらう。ティザーサイトやTwitterでも同様にです。あとは口コミですかね。
――伊坂幸太郎さんは『キャプテンサンダーボルト』(文藝春秋)で阿部和重さんと共作もされています。今回、「螺旋」に伊坂さんが参加されていると知り、コラボレーション的な意識が特に高い作家さんだと再確認しました。
高松 正確なところまではわかりませんが、『キャプテンサンダーボルト』の企画がはじまるのと同時期に、「螺旋」の企画も動き出していたはずです。たしかに、伊坂さんがコラボ好きなのは間違いないですよね。音楽にしてもマンガにしてもそうです。我々から雑談でたまたま「年表を埋めよう」という案が出て、乗って下さったのかもしれません。