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推量の域を出ないが、私は孫氏がアローラ氏と身近に接触する機会が増すにつれ、「オヤ?この人(アローラ氏)は、自分の思っていた人とは違うな」という違和感と失望を感じたのではないかと思う。後継者を選ぶに当たり、事前の身体検査(人物評価)が十分できなかったということではないか。いずれにせよ経営者としての判断の誤りという汚点は免れない。
そのほか、「経営者がいつまでもいるのはよろしくない」との一言で、社長の座を玉塚元一氏に譲った後に、「自分の期待に沿っていない」という理由で玉塚氏を解任して自分が社長の座に再びついた、ファーストリテイリングの柳井正氏の例や、一度は会長の座に退き後任者を社長にしたが、経団連会長の任期を終えるや否や社長を相談役に棚上げして、自分が社長職に再復帰したというキヤノンの御手洗冨士夫氏のあまり美しくない例もある。
さらに直近では、セブン&アイ・ホールディングス会長兼CEO(最高経営責任者)だった鈴木敏文氏と、傘下のセブン-イレブン・ジャパンの井阪隆一社長の社長職をめぐる、これ又どう見てもあまり見栄えのよくないないリング内バトルの例もある。
ことほどさように社長にとっての美しい身の引き方は難しい。難しいからこそ年を取って満天下に老醜をさらす前に、後継者を育てて自分は潔く身を引くという経営者には「男の美学」という魅力を感じるのである。
(文=新将命/国際ビジネスブレイン代表取締役社長)
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