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航空経営研究所「航空業界の“眺め”」

国産初ジェット旅客機MRJ90、米国内で「飛べない」可能性高まる…0.6トン重すぎる

橋本安男/航空経営研究所主席研究員、桜美林大学特任教授、運輸総合研究所客員研究員
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わずかに0.6トン重すぎる

 MRJ90の最大離陸重量は標準型で、39.6トン(8万7303ポンド)である。つまり、スコープ・クローズの制限値39トンより、わずかに0.6トン重いだけなのである。それでも制限オーバーには変わりなく、米国内では運航できない。

 そこで、当面50機導入予定のトランス・ステイツ社のリーチCEO(最高経営責任者)は、5月にノースカロライナ州シャーロット市で開催された全米リージョナル航空コンベンションでの記者会見で、「欲しいのはもちろん90席クラスのMRJ90なのだが、スコープ・クローズの制限値が変わらないのなら、軽いMRJ70(76席/36.65トン)への切り替えを考慮せざるを得ないかもしれない。決断のタイミングを計っているところだ」と述べている。

 70席クラスのMRJ70を決定した後、重量制限が緩和される可能性も十分あり、トランス・ステイツ社として難しい判断である。一方、100機導入予定のスカイウェスト航空CEOのチャイルズ氏は、「現段階では、MRJ90しか考えていない。とにかく、スコープ・クローズの制限値が交渉のテーブルに乗るのを待つだけだ」と述べている。

 三菱航空機は米国の情勢を見て、MRJ70についても、MRJ90の後に型式証明がとれるよう準備を開始している。しかし、最良の策は、若干航続距離を犠牲にして、最大離陸重量39トンのMRJ90アメリカ版型式証明を追加することである。なぜなら、世界のリージョナル・ジェット市場では、50席、70席クラスは退役の方向であり、航空会社は90席、100席クラス以上に向かっているからである。

 ましてや、米国国内線では大手航空の要求でファーストクラス、ビジネスクラスを設定するため、結果的にMRJ70は全体座席50~60席の中途半端な使い勝手の悪い機材になる可能性が高い。最大離陸重量を下げることはボーイングでもよくやられることで、飛行試験が必要なわけでもなく、当局の書類審査だけで済む。

 ただ、三菱としては多大なエンジニアリング・コストがかかり、また、重量制限が緩和されれば徒労となってしまうため、難しい判断を迫られる。

ピンチはチャンス

 MRJ90の開発が足踏みし何度も遅延を繰り返すなか、今やリージョナル・ジェットで世界一の座にあるブラジルのエンブラエル社は、着々と新型機E2シリーズを開発中である。今年の5月23日には、予定より早くE190-E2(130席クラス)の初飛行に成功し、航空会社への引き渡しも早まる方向。

橋本安男/航空経営研究所主席研究員、元桜美林大学教授

橋本安男/航空経営研究所主席研究員、元桜美林大学教授

日本航空で、エンジン工場、運航技術部課長,米国ナパ運航乗員訓練所次長,JALイ
ンフォテック社部長,JALUX社部長,日航財団研究開発センター主任研究員を歴任。
2008年~24年3月 桜美林大学客員教授。
2012~20年(一財)運輸総合研究所 客員研究員
2015年より航空経営研究所主席研究員
著書「リージョナル・ジェットが日本の航空を変える」で2011年第4回住田航空奨励
賞を受賞。
東京工業大学工学部機械工学科、同大学院生産機械工学科卒

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