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航空経営研究所「航空業界の“眺め”」

国産初ジェット旅客機MRJ90、米国内で「飛べない」可能性高まる…0.6トン重すぎる

橋本安男/航空経営研究所主席研究員、桜美林大学特任教授、運輸総合研究所客員研究員
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 MRJ90の直接のライバルとなるのは、E2シリーズで最も小さい90席クラスのE175-E2であり、2020年には航空会社に引渡し可能となっている。このE175-E2には、MRJ90と同様の燃費性能の高い新型エンジンが搭載され、MRJ90の売りである燃費性能の優位性は小さくなってきている。

 しかしながら、着目すべきはライバルであるE175-E2の重量である。同型機の最大離陸重量は、44.8トン(9万8767ポンド)とスコープ・クローズの制限値より5.8トンも重いのである。とても調整できるレベルの差ではない。つまり、スコープ・クローズ制限がある限りE175-E2の米国市場での出番はなく、MRJ90が最大離陸重量を変えた場合、一人勝ちになる可能性すらあるのである。最大のピンチは、最大のチャンスでもある。

 米国には、90席クラスのリージョナル・ジェットは欲しいが、スコープ・クローズを気にして決断を躊躇している航空会社がいくつもある。もし三菱が最大離陸重量39トンのMRJ90の型式証明の追加予定を早々とアナウンスすれば、堰を切ったように受注オーダーが増えるかもしれない。

 多大なコストをかけて最大離陸重量39トンに変えた直後に組合の重量制限が緩和されて徒労に終わるリスクと、早期に最大離陸重量39トンをアナウンスして一気にアメリカ市場で受注を拡大するメリットを天秤にかけるならば、最大離陸重量39トンのMRJ90アメリカ版型式証明の追加取得は、十分検討に値するものと考える。
(文=橋本安男/航空経営研究所主席研究員、桜美林大学特任教授、運輸総合研究所客員研究員)

橋本安男/航空経営研究所主席研究員、元桜美林大学教授

橋本安男/航空経営研究所主席研究員、元桜美林大学教授

日本航空で、エンジン工場、運航技術部課長,米国ナパ運航乗員訓練所次長,JALイ
ンフォテック社部長,JALUX社部長,日航財団研究開発センター主任研究員を歴任。
2008年~24年3月 桜美林大学客員教授。
2012~20年(一財)運輸総合研究所 客員研究員
2015年より航空経営研究所主席研究員
著書「リージョナル・ジェットが日本の航空を変える」で2011年第4回住田航空奨励
賞を受賞。
東京工業大学工学部機械工学科、同大学院生産機械工学科卒

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