高齢社は登録者には収入と生きがいを提供するだけでなく、2~3人によるワークシェア、フォローアップ研修、懇親会などを通じて長く働き続けられるバックアップ体制を整備している。派遣先企業のメリットは公的資格保有者や専門技術者を活用できるうえに、日曜祝日の勤務にも、割増賃金なしに労働力を確保できること。高齢化、年金給付額の削減、人手不足という社会的な課題に、包括的に取り組んでいるのである。
創業者の上田研二氏(現最高顧問)は、東京ガス在籍時に協力会社の再建に携わり、点検試験業者探しに奔走する状況を目の当たりにして、定年退職者の派遣ニーズを確信したという。2000年1月に高齢社を設立して、新築マンション落成時の給湯器点火試験、ガス機器点検業務、名刺印刷などをメインに事業をスタートさせた。現在の受託業務は約60種類に及び、ガスメーター閉栓、独身寮の住込み管理、マンション内覧会でのガス設備説明、総合設備施工、運転助手・家電機器修理補助、ガス料金収納促進、管理物件室内検査などの受託件数が多い。
派遣する前には1日をかけて研修を実施して「たとえ上長がかつての部下でも『さん』付けで。現役時代の職位・資格は言わない」「過去の成功談(自慢話)は言わない。派遣先社員には教えていただくという姿勢で」など心構えを徹底させている。緒形氏は「派遣する人材に求められるのは協調性とコミュニケーション能力です」と、シンプルだが絶対的な要件を指摘する。
あるべき人材像も明文化している。「言葉で人を導く人尊し 働く姿で人を導く人さらに尊し 後姿で人を導く人もっとも尊し」。現役世代の手本になることを求めているのだ。
カギは登録人材の新陳代謝
ミスマッチはないのだろうか。派遣先から要員の交代を要求される理由で最も多いのは、パソコン操作能力の欠如である。
「職務経歴書にはパソコンを操作できると書いてあっても、左右の人差し指だけで入力している状態だと、派遣先ではパソコンを操作できるとは見なしてもらえません。ブラインドタッチまでは要求されませんが、人差し指入力しかできないと、派遣先からは交代を要求されることがあるのです」(緒形氏)
一方、これは東京ガスグループ以外の派遣先で発生する問題だが、業務内容や勤務時間などが求人条件と異なり、クレームの対象になることもあるという。