かねてより上場の噂がなされていた、日本などで人気を獲得しているメッセンジャーアプリ「LINE」を提供するLINE。そのLINEが7月15日、ついに東京証券取引所と米ニューヨーク証券取引所に同時上場を果たした。だが一方で、これまで拡大戦略を続けてきたLINEが、「陣取り合戦は終わった」として4カ国にフォーカスした戦略を打ち出すなど、大幅な戦略変化を見せている。その理由はどこにあるのだろうか。
拡大戦略を一転、陣取り合戦は終了へ
LINEは、その急成長ぶりと日本にとどまらない利用者の拡大傾向を受け、かねてより上場に関する憶測が飛び交っていたのだが、なかなか上場する気配は見せなかった。
だが今年の7月15日、LINEは緊急の記者会見を実施し、2取引所に同時上場を果たしたことを発表した。上場前には、市場競争の激化から上場タイミングが遅いのではないかという声も少なからず上がっていたが、上場当日の初値では時価総額が1兆円を超えるなど、市況が非常に悪いなかにありながらも上々な伸びを示しており、人気の高さをうかがわせている。
LINEの代表取締役社長である出澤剛氏は、その発表会上でLINEを上場させた理由は2つあると話している。ひとつは上場することで経営の透明性を高め、サービスの信頼性を向上させること。そしてもうひとつは、世界的に激しい競争環境下にありながら、成長を継続するための資金を調達するためだとしており、日米同時に上場したことも、世界中のユーザーに利用してもらうためプレゼンスを上げることが目的だと、出澤氏は話している。
だが、世界的なプレゼンスを上げるために上場したとする一方で、出澤氏はLINEの今後の戦略に関して、「メッセンジャーアプリの陣取り合戦は、ほぼ終わったと思っている。現在の状態で新しい国に進出しても、成功確率は低いだろう」とも話している。
LINEはこれまで、日本だけでなく台湾やタイなどでもトップシェアを獲得したことから、世界でのシェア拡大に向けた積極的な取り組みを続けていたが、今回の出澤氏の発言は、従来の方針を大幅に転換するものだといえる。ではなぜ、LINEは日米同時上場を実現しながらも、世界戦略を縮小する方向に向かっているのだろうか。