4カ国にフォーカスしてポータル化を推進
その大きな理由は、出澤氏の発言そのものにあるといえよう。メッセンジャーアプリが注目されてすでに5~6年が経過しているが、先進国だけでなく新興国でも、すでにスマートフォンの普及率は一定の水準に達しており、そこで利用されるアプリの傾向も固まってきている。最近ブームを巻き起こしている米ナイアンティックの「ポケモンGO」のような爆発的なムーブメントが発生しない限り、スマートフォン利用者が新しいアプリを積極的にダウンロードしようとはしなくなってきているのだ。
それゆえメッセージアプリの利用傾向も、国によってある程度固まってきているのは事実だ。米国であればFacebook Messenger、欧州や南米であればWhatsApp Messenger、中国はWeChatと、比較的大きな国々ではすでに利用されるメッセンジャーアプリが固定化してきており、アプリに対する関心の低まりと併せて、新しいメッセンジャーアプリをユーザーが利用しようとするモチベーションは低くなっている。
そうした状況下で、ユーザー拡大に向けた投資を進めてもあまり効率的ではないのは確かだ。また現在、メッセンジャーの優劣がはっきりしていないのは新興国や小国であるため、そこでユーザー獲得のための投資を拡大しても、投資効率があまり高いとはいえない部分もある。そうしたことからLINEは、市場拡大に攻めの姿勢から、現在高いシェアを獲得している国や地域で確実に定着を進めつつ、売り上げを高める守りの戦略に移ったといえそうだ。
一方で最近では、既存のメッセンジャーアプリのプラットフォーム化を進め、そのプラットフォーム上でいかにビジネスを拡大するかに大きな注目が集まっている。最近人工知能(AI)と併せるかたちで注目されている、メッセンジャーアプリ上で会話しながら商品の購入などができるようになる「チャットボット」などが、その代表例といえるだろう。
実際LINEも、すでにLINEがトップシェアを獲得している日本、台湾、タイ、そして現在シェア1、2位を争っているインドネシアの4カ国にターゲットを絞るとしている。その上で、LINEのアプリ上でさまざまなサービスを提供するプラットフォーム展開を一層推し進め、ポータル化を推し進めることで売り上げを高めることが、今後の戦略の大きな柱となるようだ。
すでにLINEは今年3月、これまで比較的クローズドだったLINE上のプラットフォーム利用をよりオープン化し、さまざまな事業者にLINE上でサービスを提供してもらうための取り組みを進めている。そうした展開を今後は日本だけでなく、他の3つの国・地域でも強化していくものと考えられる。