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村上ファンド「村上」攻撃で完全復活…大企業の株を続々取得でやりたい放題、何がしたいのか?

文=編集部

息を吹き返したエフィッシモ

 エフィッシモは、村上ファンドのメンバーで資金運用責任者を務めた高坂卓志氏が、06年6月にシンガポールで設立した。村上ファンド代表の村上世彰氏がインサイダー取引で逮捕される4日前のことだ。捜査の手を逃れるため、村上ファンドをシンガポールへ移転させることを狙った。その際に、高坂氏は立ち上げスタッフに選ばれた。高坂氏はペンシルベニア大学でMBA(経営学修士)を取得。村上ファンドの解散後、同ファンドのメンバーがエフィッシモに合流した。

 運用実績が低迷し、苦境に立たされているファンド業界のなかで、息を吹き返してきたのがアクティビスト・ファンドだ。一定以上の保有株式を裏付けにして、経営者に対して増配や自社株買いなどの株主還元策を要求。株主総会での議決権行使などを積極的に行う投資ファンドのことで、「物言う株主」と呼ばれる。

 エフィッシモはアクティビスト・ファンドとして活発に活動している。川崎汽船、第一生命保険やヤマダ電機、リコーなど、15社の株をそれぞれ5%超保有する。7月4日に関東財務局に提出した大量保有報告書によって、ジャパンディスプレイ(JDI)株を5.44%、日東紡株を5.00%取得したことが明らかになった。

 エフィッシモの日本株買いの勢いが止まらない。さながら、“エフィッシモ旋風”と呼べるほどだ。いずれも「純投資」としているが、なかでも異彩を放つのが川崎汽船株だ。純投資であれば、拒否権を行使できる3分の1超の株式を保有する必要はないからだ。大量に保有すると、高値で売り抜けるのに邪魔になる。

川崎汽船株を海外企業に高値で売り渡す狙い?

 エフィッシモの投資手法は、かつての村上ファンドのそれを踏襲している。割安株を大量に仕込み、経営陣に圧力をかける。そして、自社株買いなどで内部留保を吐き出させ、それに乗じて買い占め株の高値売り抜けを図る手法だ。

 大量に取得した株式を発行会社やその親会社に買い取らせてもいいし、その株を欲しがっているライバル企業に売ってもいい。高い値段をつけたほうに売ればいいのだ。

 エフィッシモのデビュー戦となったダイワボウ情報システムの場合は、前者だった。老舗繊維会社、ダイワボウ(現・ダイワボウホールディングス)とダイワボウ情報システムは、親子上場していた。エフィッシモは企業統治の“ねじれ”を突いた。08年にダイワボウは、買い占められた株式の買い取りを了承し、エフィッシモは90億円の儲けを手にした。

 川崎汽船株の売却は、それとは違ったパターンになるとみられる。川崎汽船を買収したいと考えている海外の海運会社を視野に入れているようだ。海外勢は、3分の1超の株式を保有して川崎汽船の生殺与奪権を握る魂胆だろう。

 海運業界が絶好調の時には、この手法は使えないが、世界的な再編機運が高まっている今なら使える。エフィッシモにとって、川崎汽船株を高値で売り抜ける絶好のチャンスが到来しているのである。
(文=編集部)

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