ホテル経営は「顧客満足追求業」ともいえるが、全国114カ所・海外3カ所に展開するスーパーホテル(大阪市)の場合、顧客満足を向上させるというよりも、むしろ極めようとしている。顧客満足を評価する数々の受賞が、その経営姿勢を示しているのではないか。
スーパーホテルは2014年にJCSI(日本版顧客満足度指数)のビジネスホテル部門で1位となり、評価項目ではコストパフォーマンスを示す知覚価値とロイヤルティで1位を獲得した。「1円あたりの顧客満足度日本一」を目指すという突き詰めた課題が達成されたのである。
09年度(中小規模部門)と15年度(大規模部門)には日本経営品質賞を受賞し、「顧客本位に向けた経営変革は、経営品質活動の進化した姿であり、サービス業全体、組織変革を目指す組織のベンチマーキング対象となる」(経営品質協議会)と評価された。さらに14年度、15年度と2年連続で「J.D.パワー アジア・パシフィック 日本ホテル宿泊客満足度調査」(1泊9000円未満部門)No.1を獲得した。
こうした評価に対して、スーパーホテル経営品質部部長の星山英子氏は、こう受け止めている。
「宿泊客はビジネスパーソンの方がメインなので、接客サービスの方針は『日常の感動のおもてなし』と設定しています。東京ディズニーリゾートのような非日常のおもてなしとも、高級シティホテルのようなラグジュアリー感のあるおもてなしとも違います。当社のホテルでは、日常性のなかで『エッ、こんなことまでやってくれるの!』というサービスを提供しています。その取り組みが評価されたのだと思います」
たとえば雨天の日の来客にはタオルを差し出すという心遣いをし、台風が発生した日には時刻表で交通手段を調べて助言する。あるいは受験生には、応援商品として普及している「キットカット」にメッセージを添えて手渡す。スーパーホテルのサービススタンダードは「第2の我が家」だが、何より宿泊客との距離感が近い。従業員から積極的に声をかけ、カウンターから飛び出して接遇しているのである。
「マニュアルがあるわけではありません。従業員が自分の感性を働かせ、その場のタイミングに応じて何がベストかを判断して、おもてなしをしています」(同)
しかし、これだけの事業規模ともなれば、相応のノウハウが組織的に蓄積されているはずである。