見えない生産性向上策
高い顧客満足度の背景には、ハードウェアの革新性も挙げられる。スーパーホテルは「生産性の向上と顧客満足度の向上」という一見すると相反する要素の両立を目指してきた。チェックインとチェックアウトを自動化し、入室は暗証番号で鍵を省いたことによってフロント業務を効率化する一方で、宿泊客を精算時の混雑や鍵の保管の煩わしさから解放した。二兎を追って二兎を得たのである。
さらに宿泊客に見えない生産性向上として、経理業務のクラウド化がある。各ホテルに経理担当者を配置せず、クラウド活用によって自動処理し、本社勤務の4~5人で経理業務を担当している。
これらの生産性向上で実現させた1泊約5000円の料金は、1996年に博多に第1号店がオープンして以降、低価格商法としてクローズアップされてきた。会社側が低価格をアピールした時期もあったが、顧客満足度の高さが実証された今では、見方の修正が必要だろう。星山氏も「低価格というよりもリーズナブルな価格と認識しています」と述べている。
稼働率90%、リピート率70%を持続
ハードウェアによる顧客満足の向上では、快適な睡眠の提供にも重点的に取り組んでいる。その根底には、ビジネスパーソンの宿泊客が聞けば、誰もの心に灯がともる温かい思いがある。
「宿泊されるビジネスパーソンの方々には、チェックアウトしてから出張先で行なう商談に成功していただきたい。そのためには、しっかりとした睡眠を取っていただくように心を配っています」(星山氏)。
その具体策として、大阪府立大学と共同で「ぐっすり研究所」を設立し、科学的な知見に基づいてオリジナルのベッドと枕を開発した。枕は8種類が用意され、フロント脇に設置されたコーナーで自由に選べる。
さらに室内の天井には、消臭機能を発揮する「稚内珪藻土」(わっかないけいそうど)という北海道で採掘される岩石の粉末を塗布して、快適な空間を保持している。
コンセプトに掲げる「Lohas(ロハス)」の実践では、浴室にセットしたシャンプーやコンディショナーがオーガニック。朝食で提供される野菜はすべてJAS認定の有機野菜で、保存料・化学調味料・アレルギー特定原材料などの27品目不使用のオリジナルドレッシングが添えられている。味噌汁には有機大豆で醸造した味噌を使用している。