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円高の悪夢、再び到来の兆候…企業努力を吹き飛ばす威力、日本経済に大きな逆風

文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授
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 一方、英国が今後も追加緩和を進めることを示唆した以上、ドル買いの圧力は徐々に高まりやすい。そうなると、FRBはこれまで以上に慎重に利上げの可能性を吟味せざるを得ないかもしれない。米国の利上げの可能性が残るとはいえ、タカ派色は強まりづらいはずだ。そうなると、ドルが主要通貨に対して一方的に強含む展開は想定しづらい。

わが国への影響

 
 では、日本にはどのような影響が考えられるだろう。もっとも重要な影響の波及経路は、円の為替レートの変動だ。

 今回の会合でBOEのカーニー総裁は積極的な緩和姿勢を強調した。これに対して、日本の金融政策は限界に直面し、市場ではその修正が必要との見方が増えている。ECBも追加緩和の可能性があるが、策は限られつつあるようだ。

 つまり、各中央銀行が金融緩和というレースを進めるなか、現状では英国の積極的なハト派姿勢が一歩抜け出し、投資家の注目を集めている。その分、目先の金利低下への思惑が高まり、ポンドの下落圧力は高まりやすいだろう。

 すでに、日本の金融緩和に対してはマイナス金利が金融機関の経営を圧迫し経済を壊すとの懸念さえ出始めている。現実的に考えると、さらなる緩和は期待しづらい状況にある。米国が積極的に利上げを進めづらいことも考えれば、円の上昇圧力は高まりやすい。

 いうまでもなく、円高はわが国の経済にマイナスだ。4日にトヨタ自動車が発表した2017年3月期の業績見通しでは、営業利益が前期比44%減の1兆6,000億円になると示された。前期のドル/円の実績レート(120円)を102円に修正した結果、当初の見通しに比べ営業利益は1,000億円減少する。つまり、為替レートの変動は、原価改善や営業の努力を消し去るほどのマグニチュードを持つ。

 中国の景気リスク、米国の景気回復の動向、英国のEU離脱交渉など、世界経済の先行きに関するリスク要因は増えつつある。世界経済の成長率が上向くとの期待が高まらない以上、投資家はリスク回避を念頭に行動するだろう。それは、ドルなどに対する円の上昇圧力を高めやすい。

 そして、世界的に需要が低迷するなか、多くの国が金融を緩和して為替レートの減価圧力を高め、当面の景気を支えようとしている。英国もこのレースに参加し、各通貨の切り下げ圧力は高まりやすい。円高リスクが高まっていることは冷静に考えたほうが良いだろう。
(文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授)

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