一方、日産も16年4~6月期決算は減収・減益に沈んだ。売上高は8%減の2兆6544億円、営業利益は9%減の1758億円、純利益は11%減の1363億円だった。
三菱自と共同開発した軽自動車デイズシリーズの生産・販売の停止が大きかった。日産の4~6月期の国内の新車販売台数は25%減の9万台に落ち込んだ。国内シェアは前年同期の11%から8%の1ケタ台へ転落。通期で58万台とする国内販売目標の達成に赤信号が灯った。
インドネシアで多目的スポーツ車の販売を強化
三菱自は8月2日、燃費不正問題を受けて設置した特別調査委員会が提出した報告書を公表した。05年に、燃費測定方法が法規に従っていないとの指摘を新入社員から受けたが、改めなかったことが明らかになり、自浄作用が働かない経営体質が再び浮き彫りになった。
そんな隠蔽体質は簡単に改まるとは思えない。それなのに、なぜ日産は2373億円も出して三菱自を傘下に収めたのか。ゴーン氏にははっきりとした狙いがある。共同開発した軽自動車デイズとデイズルークスは、日産の国内販売の4分の1を占める。三菱自が経営破綻する事態になれば、日産は深刻なダメージを受ける。
三菱自からOEM(相手先ブランドによる製造)供給を受けていた軽自動車の生産拠点を獲得し、自前の軽自動車をつくるために救済に乗り出したという見方が一般的だ。だが、もっと大きな狙いは、三菱自の自動車を東南アジアで販売している三菱商事の販売網に日産製の自動車を乗せて売ってもらうことだ。
ゴーン氏は「三菱グループの力を活用したい」とはっきり言っている。三菱商事が40%出資する三菱自のインドネシアの新しい工場が17年に稼働する。東南アジアで売れ筋の小型多目的車を、日産ブランドで生産するプロジェクトを練っているともいわれている。
世界販売台数1000万台を目標にする日産にとって、三菱商事の販売網は喉から手が出るほど欲しいところだ。三菱商事とのパイプをつなぐためには、三菱商事出身の益子氏を引責辞任に追い込むのは得策ではないと判断し、続投させることにした。10月に日産の出資が完了しても、益子氏は要職に残ることになるとの見方もある。もし、益子氏が退任する場合には、6月24日の株主総会後に副社長へ昇格した白地浩三氏が社長候補として最有力といわれている。その白地氏も、三菱商事の出身だ。
三菱自は、販売台数の9割以上がアジアなど海外で、国内への依存度は低い。つまり、再生の切り札は東南アジアにある。
益子氏は8月10日、インドネシアのジャカルタで開いた記者会見で、18年度をメドにインドネシアで乗用車を扱う販売店を現在の1.8倍にあたる140店に増やすことを明らかにした。17年春に現地で新工場を稼働するのに合わせ、多目的スポーツ車(SUV)や小型多目的車(MPV)の販売を強化する。
国内の苦戦は長期化するとみられ、収益の柱である東南アジアでの基盤を固めるしかない。ゴーン氏と益子氏の狙いは一致している。すなわち、合言葉は「東南アジア」である。
(文=編集部)