角川GHDが販売開始する『Amazonの3・11』は、電子書籍のみの販売となり、紙の書籍制作には約6カ月かかるが、印刷工程等が不要なため、2カ月間で発行したという。
また、幻冬舎は3月1日、『旅者の歌』(小路幸也)を5回に分けて配信する手法を採用するかたちで発売した。1回目を無料にして、2回目以降は315円と手頃な価格で順次配信、3月末までに配信を終了する。紙の書籍では文庫本や新書などの体裁が一定程度決まっている。一方、電子書籍では自由なページ数に分割して販売可能なため、ページ数を減らして安価な値付けで分割配信し、多くの読者を取り込むことを狙う。
そうした中、アップルが始める電子書籍事業では、自社製の「iPad」や「iPhone」の利用者に対象を限定し、自社の電子書店「iブックストア」上で簡便な購入手順を導入。同社が無料で配布する電子書籍閲覧アプリ上で、1クリックで購入/ダウンロード/読書開始を行える。
また、先行するアマゾンは、自社製の電子書籍端末「キンドル」など加え、他の多くのハードウェアにアプリを提供する。
電子書籍の利用者は拡大している。
講談社は12年6月から、新刊本は基本的に電子書籍で同時刊行し、1年で約1000点を電子書店で販売。紙の書籍販売への影響も少なく、売上増につながっているという。2012年11月期の単独決算で、電子書籍の年間売上高は27億円でと、13年11月期には3割増の35億円を見込む。
12年度の国内電子書籍市場は713億円で、16年度には2000億円まで拡大すると予想されており、各社の競争が本格化し初めているが、国内の電子書店は10店以上あり、利用者の奪い合いも激しくなると見られている。
(文=編集部)