JSCが所有・運営するスタジアムは新国立競技場だけではない。東京都北区には、味の素ナショナルトレーニングセンターと味の素フィールド西が丘がある。そして、名前からもわかるように、この2施設はどちらもネーミングライツを導入し、その収入を得ている。
「トレーニングセンターは4年間の契約で年4000万円、西が丘サッカー場は5年契約で年1500万円の契約料になっています」(JSC広報)
2施設で年5500万円しか稼ぎ出せていない。これら2施設と新国立競技場では、世間に与える宣伝効果は大きく異なる。新国立競技場のネーミングライツはこれよりも高額になるだろうが、それでも契約料は推して知るべしだろう。
スタジアムの運営・管理にかかわった地方自治体関係者は、こう指摘する。
「現在、スタジアムのみならず公共施設は地方自治体の財政が苦しいこともあって、ネーミングライツを続々と導入しています。なぜなら、少しでも税金での負担を軽減する潮流になっているからです。すでに導入されている例としては、公営のコンサートホールや道路、歩道橋などがあります。しかし、それらはネーミングライツを導入しても、PR効果があまりありません。野球場やサッカー場といったスポーツの競技施設は、テレビ中継で施設名を連呼してもらえます。一方、道路やコンサートホールには、そうしたテレビ中継効果はありません」
杜撰な収支シミュレーション
少しでもコスト縮減したい大阪市では、歩道橋にネーミングライツを導入したが、スポンサーに手を挙げる企業は少なく、苦戦を強いられている。そうした事情もあり、昨今はスポーツ施設にネーミングライツの人気が集中している。
「JSCとしては、スポーツ施設へのネーミングライツが成功しているから、新国立競技場でもと思っているのでしょう。しかし、最近はどこもネーミングライツを導入しているので、契約料は下落傾向にあります。新国立競技場でも契約料はそんなに高くならないでしょう。最近の相場からすれば、年1億5000万円~2億円が妥当なラインだと思います」
当初のJSCの見立てである200億円を稼ぎ出すには、年2億円の契約でも100年かかる計算になる。JSCが杜撰な収支シミュレーションで建設計画を進めていたことは間違いない。