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碓井広義「ひとことでは言えない」

フォロワー数の増減は実生活になんの影響もない…24時間ソーシャル状態、しんどくない?

文=碓井広義/上智大学文学部新聞学科教授
フォロワー数の増減は実生活になんの影響もない…24時間ソーシャル状態、しんどくない?の画像1「Thinkstock」より

 テレビ番組もそうだが、CMは時代を映す鏡だ。その時どきの世相、流行、社会現象、そして人間模様までを、どこかに反映させている。この夏、流されているCMのなかから、注目作を2本選んでみた。共通するのは「喚起するチカラ」だ。

JR東日本『行くぜ、東北。「女川(おながわ)の今」篇』

 CMの効用のひとつに、「思い出す」がある。JR東日本『行くぜ、東北。』シリーズはそんな1本だ。2011年3月から5年と5カ月。被災地に対する「どうしているだろう」の気持ちを、さりげなく刺激してくれる。

 前回までの木村文乃さんに代わる、新たな旅人は松岡茉優さんだ。NHK連続テレビ小説『あまちゃん』の地元アイドル役でブレイクし、昨年の『She』(フジテレビ系)、今年の『水族館ガール』(NHK)と連ドラ主演作が続いている。どんな役柄も自然に自分のものにしてしまう演技力。またバラエティーでも崩しすぎない親しみやすさが持ち味だ。

 今回、松岡さんが歩くのは宮城県女川町。地震と津波で沿岸部の被害は壊滅的といわれたが、昨年末にはテナント型商店街「シーパルピア女川」もオープンした。ナレーションの通り、「東北は前へ進んでいる」のだ。

 間もなくやってくる今年の秋、旅に出るなら、ぜひ東北へ。

武田薬品工業『アリナミン7シリーズ「乙です、ソーシャルちゃん!」篇』

 家でもスマホ、会社でもスマホ。教室でも、そして電車の中でもスマホ。そんな風景が当たり前になっている。

 多分、「普通の携帯電話(ガラケーって言葉、あまり好きじゃないので)」を愛用している者にはうかがい知れぬ、何かとんでもない秘密の“楽しみ”が手のひらの中にあるのだろう。でも、“24時間ソーシャル状態”って、しんどくないのかな?

 そんなことを思っていたら、武田薬品『アリナミン7』のWEB限定CMで、“さや姉(ねえ)”ことNMB48の山本彩さんが、画面から語りかけてきた。

「意識高い投稿してるけど、モテたいだけでしょ?」
「キミの『いいね!』のハードル、いくらなんでも低すぎません?」
「タグ付けは慎重にね。それで人生が終わる人もいるんだよ」
「フォロワー数が増えても減っても、実生活にはなんの影響もないよ。楽になって!」。

 いやあ、よくぞ言ってくれました。お疲れ気味になっている世の“ソーシャルちゃん”たちへの救いの言葉であり、同時に一種の警鐘でもある。

碓井広義/上智大学文学部新聞学科教授

碓井広義/上智大学文学部新聞学科教授

1955(昭和30)年、長野県生まれ。メディア文化評論家。2020(令和2)年3月まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。慶應義塾大学法学部政治学科卒。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年、テレビマンユニオンに参加、以後20年間ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に『人間ドキュメント 夏目雅子物語』など。著書に『テレビの教科書』、『ドラマへの遺言』(倉本聰との共著)など、編著に『倉本聰の言葉――ドラマの中の名言』がある。

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