トヨタ、自動車ローンで驚異的高収益…小売業を必ず衰退させる「儲かる金融事業」
金融サービスに傾倒する小売業は衰退する。厳密にいえば、顧客データベースを構築して金融サービスを始める小売業は衰退する。
古今東西、企業が顧客データを蓄積するようになると、必ずといっていいほど、保険販売、ショッピングクレジットやキャッシングを含めた金融サービスを始める。顧客データを保有する企業には小売業が多いので、「小売業は金融サービスを始めたがる」としてもよい。そしてまた、金融サービスに力を入れた小売業は、本業がダメになってしまうことが多い。
最初に、金融サービスを始めてダメになった小売業の「古今東西」の例を挙げてみる。
1960~80年代にかけて、米国一の小売業だったシアーズ(Sears, Roebuck & Co.)。そして、英国人の5人に1人が顧客だといわれた英国のテスコは最近の例だ。
19世紀末にカタログ通販を始めたシアーズは、20世紀になって高速道路網が米国全土に広がっていくのに合わせて店舗販売も開始。1945年には10億ドルの売り上げだったのが63年には50億ドルとなり、戦後の米国の繁栄の象徴となった。
金融サービスの提供は、1911年に地方の農民がカタログに掲載されている高額な耐久品を分割払いできるようなサービスを提供することから始まった。モノを買ってもらうために、お金を貸すわけだ。この点は、日本の丸井が31年の創業時に割賦販売でモノを売ったのと同じだ。
消費者にお金を貸してモノを売る
銀行が一般消費者にお金を貸すことなど考えもしていなかった時代には、小売業者だけでなく自動車メーカーも家電メーカーも、消費者に自らお金を貸してモノを販売した。
自動車の例でいえば、米国では20年代にゼネラル・モーターズ(GM)がローン・サービスを提供しはじめた。これにより、高額所得者層でなくても自動車を購入することが可能になった。日本では、60年にプリンス自動車(現日産自動車)が最初に始めたといわれる。
そして60年後の今、トヨタ自動車の金融債権(消費者への自動車ローン、法人客へのリース契約やディーラーへの貸付金から成る)は14兆円を超えており、総資産の約30%となっている(2016年3月期)。トヨタの金融事業は収益性も高い。売上高ではわずか6.5%だが、営業利益の24.7%を占める。売上高利益率を見ても、金融事業は17.9%で自動車事業の9.4%よりかなり高い。