トヨタ、自動車ローンで驚異的高収益…小売業を必ず衰退させる「儲かる金融事業」
小売業や製造業者が金融サービスを始めた場合、金融事業のほうがモノをつくったり売ったりするより利益性が高いのは当然だ。モノをつくり販売して獲得した顧客基盤(顧客ベース)がある。顧客基盤は、顧客データだけでなく顧客との関係性をも含む。ある程度の顧客ベースを背景に、顧客一人ひとりと金のやりとりをすることは、特にデジタル時代においてはコストをかけずに利益を出すことができる。
それでも、メーカー(製造業)は小売業とは違って、金融サービスへの多角化を積極的に進めるところまではいかないことが多い。例外としては、米国ではゼネラル・エレクトリック(GE)、日本では保険会社や銀行を傘下に持つソニーの名前が頭に浮かぶ。
GEが、自分たちの製造した家電を一般世帯に販売するためにローンを提供し始めたのは1932年。この事業(GE Capital)は80年代から90年代にかけて、名経営者といわれたジャック・ウェルチ元最高経営責任者(CEO)の指揮のもとに積極的に拡大され、GEの利益の半分を占めるまでになった。しかし、2008年の金融危機後に政府の銀行への規制が厳しくなり、資産額では実質的に第7位の銀行とみなされたGEは、これまでの高利益を生むビジネスのやり方を変更せざるをえなくなった。金融事業は、製造業よりも低い利益性しかもたらさなくなると考えたジェフリー・イメルトCEOは、製造業に回帰することを宣言。2015年から金融事業を矢継ぎ早に売却している。
本業の小売業が低迷するシアーズ
シアーズに話を戻す。
1886年に創業したシアーズの顧客数は、1920年代後半にはすでに2000万人を超えていた。31年には、オールステートというブランド名で自動車関連部品を販売していた関係から、そういった商品の購買客を中心に自動車保険を通信販売するオールステート保険会社を子会社として設立している。そして、53年にはリボルビングクレジットカードを発行して、所得がそれほど高くない客でも高額品を躊躇することなく簡単に買えるような仕組みを提供した。
30年代から60年代までは、金融サービスはあくまで顧客の便宜性を高めるための付加サービスの要素が強く、ビジネスの中心はモノの販売だった。