新型スマートフォン(スマホ)「iPhone 7」を9月16日に発売した米アップルの株価が急激に伸び始めた。14日の米株式市場でアップル株が年初来高値を更新し、時価総額は6000億ドル台を回復した。
これに対し市場関係者は、「減収が続いていたアップルだが、iPhone 7の投入によって業績が上向くのではないかとの期待から買いが入っている」と分析している。もちろん、そういう側面もあるだろうが、9月12日付当サイト記事『iPhone 7、広がる失望…Suicaやおサイフケータイ対応で必死のあがき』で指摘したように、iPhone 7に関する発表を行った直後からアップルの株価は下がり続けていた。つまり、iPhone 7がアップルの業績を回復させるほどの製品とは見られていなかったのだ。
では、なぜ今アップルの株が買われているのだろうか。それは、ライバルである韓国サムスン電子が自滅したからだ。iPhone 7に先駆け、8月に発売されたサムスンの新型スマホ「Galaxy Note 7」「Galaxy S7 edge」が爆発や発火する事故が相次ぎ、ケガ人まで出た。それを受けて世界各国の政府がGalaxyシリーズの販売停止措置をとったり、使用停止勧告を出すなど大騒ぎとなった。サムスンや中国メーカーのスマホにシェアを奪われつつあるなかでサムスンが大問題を起こしたため、iPhoneに流れる客が出てくると読んだ投資家がアップルの株を買っているとも考えられる。
米通信大手スプリントとTモバイルUSが、iPhone 7の事前予約が好調と明らかにしたことで買いが続いている。だが、両社は具体的な数字を公表していない。また、アップルも発売最初の週末の売り上げデータは明かさないと述べており、iPhone 7が実際にどの程度売れているのかは把握できない。
アップルは4月、現在と同程度にまで株価が上がっていたが、1~3月期に減収減益となったことを発表すると急落した。最大8%も下落した日もあった。そして5月上旬には約20%も下がった状態になっていた。
具体的な数字を出さずに「売り上げは好調」と発表し、投資家に期待を持たせることは珍しくない。だが、実績が期待外れだった場合、株価は暴落し経営者が厳しく糾弾されることになりかねない。実際に、アップルが発売当初のデータ公表をしないとの方針を発表した直後は、頭打ち傾向のあるiPhoneの販売動向を隠すためではないかとの憶測が広がり、株価が下落した。