「一人負け」ホンダ社長が初激白…リコール続出の裏で、前代未聞の進化的経営革命
2015年6月に八郷隆弘氏がホンダ社長に就任してから、1年超が経過した。13年から14年には、人気車種「フィット」の5度にわたるリコール、タカタ製エアバッグ問題の拡大など品質問題が発生。15年は、7年ぶりにF1(フォーミュラ・ワン)世界選手権に復帰したものの1勝もあげられずに惨敗。業績は、大手自動車7社が好調のなか、タカタ関連のリコール費用引当金が収益を圧迫し、「ホンダ一人負け」とまでいわれた。
本田技術研究所社長経験者という不文律を破り、“異例の抜擢”で社長となった八郷氏は、この一年、何をしたのか。また、ホンダにどんな未来図を描いているのだろうか。
現場回り
片山修(以下、片山) 就任から1年が経ちました。就任後はまず、現場に足を運ばれたそうですね。
八郷隆弘氏(以下、八郷) 販売店を含め、国内外の事業所を回りました。まだ行かなければならない場所はありますが、主要なところだけでも、かなり時間がかかりました。話をして歩き、「思い」は伝わったと思います。ただ、大きな方向性は一朝一夕には変わらない。とくに、日本の事業所は大きく展開していますから、難しいと実感しています。
片山 現在、ホンダの従業員数は連結で20万8399人。単独2万2399人。これだけ大きくなると、トップが「こっちだ」といっても、それを組織に完全に浸透させるのは簡単ではありませんね。
八郷 私は社長就任前、中国広州で2年、その前は英国の四輪工場で1年仕事をしましたが、地域本部は割と方向性を共有しやすい。まとまり感があるんです。一方、日本は大きいですから、経営陣が思っていることを現場にまで伝えるのが難しい。
片山 腕力がいります。「魂」が入らなければ、掛け声だけでは企業の方向性は変わりませんね。
八郷 そうですね。トップは大きな目的をつくり、各部門はそれに基づいた目標をつくりますよね。その目標は、数値化するほどわかりやすくなるんですが、数値が一人歩きすると、今度は上位概念が伝わらなくなる。難しいところです。
六極体制の進化
片山 前社長の伊東孝紳さんは、2008年のリーマンショック後、日米欧、中国、アジア、南米の六極に地域本部を設ける「グローバル六極体制」を構築しました。八郷さんは、社長就任時に「六極体制の進化」を掲げましたね。