コンビニ、2強生き残りかけ最終戦争突入…ローソン、玉塚氏排除で三菱商事が直接経営
しかし、玉塚氏の社長就任に危惧を抱いた親会社・三菱商事は、“保険人事”によってリスク対応とした。すなわち竹増氏を代表権のある副社長として送り込んだのである。三菱商事で畜産畑時代の直属上司には現社長である垣内威彦氏がいて、ローソンに移る直前には小林健社長(当時、現会長)の秘書を務めていた。竹増氏は三菱商事のこれ以上ないメイン・ストリームを歩いてきたエース人材なのだ。
三菱商事にとっては、同社出身だったカリスマ経営者・新浪剛史氏が残していった「外様経営者」から、今回、「譜代経営者」へとスイッチして経営の距離感を埋めようとしている。「経営権の大政奉還」、すなわち資本家である親会社への大政奉還が行われたのだ。
玉塚経営、スコアは悪くなかったが
玉塚CEOと竹増COOの業務管掌を見ると、玉塚氏が国内のコンビニ事業、竹増氏がM&Aと新規事業や海外事業となっており、通常のCEOとCOOの立場が逆転している。しかも「国内のことは玉塚会長と私とで並んで見る」と竹増氏は述べている。
トップ人事が2頭体制ではなく、竹増氏への経営権の傾斜ということが読み取れる。それでは、玉塚氏は実権が薄れる方向へ退けられたのか、あるいは自ら逃げ込んでしまったのか。おそらくその両方だと私は思う。
玉塚氏の業績は、更迭されるほどに悪いものではなかった。新浪前社長が12期もの間増収増益を達成し名経営者と謳われたが、玉塚氏もその後2期増収増益を続け、17年2月期もそれを見越している。
しかし、今年に入り足元では悪い兆候が見られるようになっていた。
まず16年3〜5月期(第1四半期)の連結決算は、営業収入は前期比6.2%増の1489.11億円だが、営業利益は同8.8%減の174.51億円となり、経常利益は同12.9%減の166.76億円、四半期純利益は同15.2%減の77.18億円となった。
次に、ファミマが4月に日本郵政グループと提携した。店舗をネット通販の配達拠点に活用したり、日本郵便の荷物を受け取れるロッカーを設置したりする。ゆうちょ銀行のATMを設置すれば、集客の大きな柱になる。実は、水面下でローソンとファミマの間で、ゆうちょ銀行のATM争奪戦が繰り広げられていた。
さらに7月末に、セブン-イレブンが近畿2府4県の店舗数で、大阪発祥のローソンを抜いて首位になってしまった。同地区での店舗数は、ローソンの2393店に対し、セブンが2433店で40店上回った(3位のファミマは2081店)。