コンビニ、2強生き残りかけ最終戦争突入…ローソン、玉塚氏排除で三菱商事が直接経営
これらのことは大きな流れ、ローソンの長期的業績からはあるいは些事なのかもしれない。しかし、「コンビニ最終戦争」とか「2強に集約」などといわれる今年、その非常時には親会社を不安がらせるには十分な出来事だったかもしれない。不安なときは内輪親族で固めよう、というのが三菱商事の意思となったのではないか。
勝ちきれないプリンス、大事を遂げられない経営者
玉塚氏もしかし、この非常時に妙に引いてしまっているように私には見える。年初のあたりから「これからはオール三菱で当たろう」とか「三菱グループとしての強みで戦う」などとして、親会社というか、玉塚氏にとっては進駐軍の張り出しを願っている、誘うような言動をしていた。非常時だからこそ、「俺について来い」「我が膝下に結集せよ」「俺の言うことを聞け」という力強い言葉を出せなければ、リーダーとはいえまい。
親会社に外様経営者を疎む気配があり、玉塚氏本人は以心伝心で挫けることがなかったのか。難関の局面にきて、阿吽の呼吸で三菱商事側に経営権を禅譲してしまったのではないかと私は見ている。
社長に就任したとき、玉塚氏は素敵だった。「17年度には連結営業利益1000億円を目指す」(14年3月24日社長交代会見)とした。しかし、現見込みでは720億円である。「誰とでも一瞬にして打ち解けることができる。それこそが玉塚の最高のスキルである」(「週刊東洋経済」(東洋経済新報社/14年11月22日号)と評された。
同じ記事の副題はしかし、「負け続けたプリンス」だった。慶応義塾大学時代にラグビー部でキャプテンを務めて、学生選手権や全日本などではいつも決勝で負けてしまったことも揶揄していた。コンビニ最終戦争がやってきたまさにこの時、この修羅場で戦うことができない、そして結局勝ちきることができない経営者だったのだろうか。
「今はチーム玉塚として、みんなで肩を組んで歩いている(ローソンのフランチャイズ店舗の有力オーナーの談)」(同記事)
前任だった新浪経営が強いトップダウンによるリーダーシップとすると、玉塚経営は協調チームワークだったともいえる。そんな経営者だからこそ、いざとなれば親会社からの派遣経営者に自ら軍扇を差し出してしまったように見えるのは、その育ちのよさからなのか。放棄してしまったなら、リーダーシップも何もあったものではない。玉塚氏は「キングになれなかったプリンス」のままで終わるのだろうか。