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ワーナーの一斉リストラ、執拗な退職勧奨工作を元社員が告発…突然の解雇、審判を申立

文=寺尾淳/ジャーナリスト

 しかしAさんによれば、ワーナーの経営状況は内部資料などを見る限り、ひどく悪化しているわけではないという。公表された15年9月期の累損は18億円だが、赤字なら出ないはずのインセンティブボーナスは支給されていた。

 それ以前にも昨年9月に受け取った、Aさんに出向先探しの支援サービスを申し込ませる書面である「出向先開拓支援申込書」に、なぜか退職日の記載欄があるなど、巧みに退職の承諾を取ろうとする工作がみられた。私文書偽造として刑事責任も問われかねない行為だが、Aさんが指摘すると「C社が間違えた」と責任を転嫁したという。

 10月3日、Aさんは解雇は無効だとして会社を相手取り、東京地裁に地位確認を求める労働審判の申立を行った。審理は11月から始まる予定で、多くても3回の審理で審判が下されるため、年内に決着がつく見通し。

 申立代理人を務める深井剛志弁護士は「整理解雇には厳しい条件があります。解雇無効の審判には確信を持っています」と話す。整理解雇は、判例で「人員整理の必要性」「解雇回避努力義務の履行」「被解雇者選定の合理性」「手続の妥当性」の4つの要件がすべて適合しないと不当解雇になるとされているが、ほとんど適合していないという。

「昨年は多くの企業でベテラン社員の指名退職勧奨事案が起き、望まないかたちで退職を余儀なくされた人が少なくなかったのですが、規制が強化された後は、まるで開き直ったようなストレートなかたちの解雇が増えています。それに歯止めをかける上でも、Aさんの件は重要だとみています」(前出・鈴木委員長)

 Aさんは冒頭の会見で、次のように語った。

「私が在籍している間、社員は一番多い時には500人くらいいました。この業界はどこでもそうですが人減らしが始まって、ワーナーは04年に契約社員や派遣社員を中心にする方針を打ち出し、人件費が高いベテラン正社員の退職勧奨を何回も行うようになりました。8月1日時点の社員数は142人ですが、契約社員が大半で、正社員は40人くらいしか残っていません。(15年夏に約30人の社員に対して行われた)退職勧奨を受けても拒否したのは私も含めて5人で、そのうち3人は、給料を1~2カ月分上乗せする条件をのんで結局、退職していきました」

 Aさんは「ワーナーがこんなことをやっていいのかという気持ちです」と言い、31年半勤めた会社への愛着もにじませる。音楽制作の現場ではなく裏方の仕事でかまわないと、職場復帰を望んでいる。

 映像、音楽の世界的なブランド「ワーナー」の名誉にもかかわるだけに、労働審判の行方に注目が集まる。
(文=寺尾淳/ジャーナリスト)

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