19年ぶりに4社目のJRグループが株式市場に登場する。
九州旅客鉄道(JR九州)は、10月25日に東京証券取引所1部、26日に福岡証券取引所に上場する。JRの上場日はすべて10月というのもおもしろい。東日本旅客鉄道(JR東日本)は1993年10月26日、西日本旅客鉄道(JR西日本)は96年10月8日、東海旅客鉄道(JR東海)は97年10月8日だった。
JRの上場日には株価が下がるというジンクスがある。
JR東日本の株式が公開された日の日経平均株価は402.74円安(2.0%安)。翌月から相場が大きく崩れ、JR東日本は“疫病神”といわれた。
JR西日本が上場した日は1089.54円安(5.1%安)と、1000円以上大きく下がった。JR東海の上場日は1428.77円安(8.0%安)で、やはり1000円以上、下落した。96年、97年とも年央にかけて日経平均株価は上げ、JRの上場後に低迷を強いられた。
JR九州の上場も同じパターンをたどるのだろうか。JR九州の上場は売り出しのみで1億6000万株。市場からの吸収金額は、目論見書記載の想定発行価格2450円で試算すると3920億円になる。高い知名度を誇り、2015年秋の郵政グループほどではないにしても、普段は新規公開株を買わない個人投資家を呼び込む力を持っている。
マーケットからの吸収金額や企業規模に照らして、今年後半のIPO(株式公開)の目玉となる大型案件であることは確かだ。
ただ、実際は九州の“ローカル銘柄”なのだ。JR東日本、西日本、東海の3社が上場済みであることからみても、新鮮味には欠ける。
郵政グループ上場時ほどではないが、サポートする引受け証券会社の体制も手厚い。三菱UFJモルガン・スタンレー証券、野村證券、JPモルガン証券、SMBC日興証券が国内主幹事4社を形成するなど、59社が引受け証券会社として名前を連ねている。
JR九州、実態は鉄道会社というより不動産会社
JR九州は、売上高では全体の1割にすぎない「駅ビル・不動産」で利益の9割超を稼ぐ構図になっている。16年3月期の同部門の営業利益は204億円に達する。つまり、鉄道会社というより不動産会社なのである。駅ビルとマンション販売が主な収入源だ。
確かに、日本初のクルーズトレイン「ななつ星in九州」は知名度が高い。11年3月に九州新幹線が全線開通したが、それでも鉄道では儲かっていない。主力の「運輸・サービス」は売上高の4割を占めるが、16年3月期は105億円の赤字だった。バス路線では日本一の西日本鉄道(西鉄)以外、有力な私鉄がないのが救いだ。アジアの玄関口として、九州の観光資源をいかに生かすかが今後の課題となる。