まずは見てもらわないと始まらない「PR動画」
そうしたなか、「助成金ありき」で制作された各自治体のPR動画も少なくありません。500万円近くの費用をかけて制作したにもかかわらず、再生画数が1000回に満たないという自治体PR動画があることも現実です。そうなると、単純計算で1回の再生当たり約5000円の投資ということになります。
税金を使うという建前から「平等主義」が貫かれ、なんの変哲もない、外から見ているとまったく面白みのない、角がすっかりとれてしまった動画に、政府はコンテストで賞を与えています。しかも、その「地域情報満載賞」とは、いかにも“八方好し”、そして発信する自治体側の“内輪受け”そのものです。公金の使い方として、費用対効果を無視した実例をみてとれます。
まっとうな制作担当者であれば、実際の効果をもたらすためには、「まずは、PR動画を見てもらわなくては、言いたいことが伝わらない」と考えるでしょう。
一般的なテレビCMは、15秒あるいは30秒といった枠のなかで制作され、広告主がお金を支払ってオンエアされます。一方、PR動画は動画素材自体を制作するものの、「YouTube」などの動画閲覧サイトに公開することで、媒体費がゼロ円というものがほとんどです。
PR動画には、テレビCMのようにズカズカと茶の間に入り込んでいく自力はありません。せっかくつくったPR動画をターゲットに到達させるためには、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)等での視聴者による「拡散」と、テレビ番組等に取り上げられる「パブリシティ」効果が必要になります。
800万円で6億円の効果
つまり、多くのPR動画のなかで、頭ひとつ抜きんでること、すなわちインパクトの強い内容が重要になってくるのです。動画の内容にいかに“フック”をつくって、“話題づくり”をしていくかということが大きなポイントとなります。
再生回数が200万回を超えた宮崎県小林市の「ンダモシタン小林」編は、「フランス語だと思っていたら地元の方言だった」というオチが、「思わず二度見する」ナイスアイディアの賜物。こちらの800万円で4本制作した移住促進PR動画は、数多くのテレビ番組に取り上げられました。
このことが大きなきっかけとなって小林市のふるさと納税額は、PR動画公開前の約1億3000万円から7億2000万円以上に達しています。もちろん、返礼品施策などの功績もありますが、このPR動画が起爆剤となったことは確かです。
こうした事例は、「工夫しだいで大化け」するPR動画の持つポテンシャルをうかがわせ、各自治体が力を入れているのもうなずけます。