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米国と中国と欧州、一斉に「自国利益優先主義」鮮明…世界、想定外の事態突入の兆候

文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授
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 欧米でも、経済低迷への不満が自国第一の政治につながっている。米共和党の大統領候補であるトランプ氏は、米国は自国のことだけを考えればよいと主張し、世界の安全保障や貿易協定を真っ向から批判している。国際社会の常識を無視した歯に衣着せぬ発言が、「これまでの政治家とは違う」という漠然とした注目や期待を集め、支持につながっているのではないか。

 一方、欧州では、英国の国民投票以降、伊、西、独、仏、蘭などで右派の台頭が顕著だ。それはEUから自国の決定権を取り戻し、移民や難民ではなく自国民の利益を重視すべきとの世論に推されている。

 こうした欧米の政治に共通するのが“ポピュリズム”だ。それは大衆の利益を主張し、支持を得ようとする政治をいう。ポピュリズムが台頭すると、政治は中長期的な社会・経済の安定よりも、目先の民衆の不満解決に向かう。政治は中長期的に必要な判断を下せなくなり、先行き不透明感が高まりやすくなっている。

ブレグジットが高めるEU分裂のリスク

 米国の大統領選挙への警戒感が高まるなか、ブレグジットへの懸念も高まっている。それは、英国経済への懸念、そして欧州全体の政治混乱への懸念だ。

 10月2日、英国のメイ首相は2017年3月末までにEU離脱の意思を通告すると表明した。この期限は、多くの投資家が想定したタイミングよりも早かったようだ。市場では通告後2年間の交渉期間の中で、英国とEUの意見がまとまらず、強制的に英国が単一市場から閉め出されるとの不安が出ている。

 また、英国の離脱交渉次第では、他の国でもEUからの離脱を求める声が高まりやすい。相対的に経済が良好なドイツでさえ、難民の受け入れがテロの温床になったことへの批判が高まり、自国の命運はEUではなくドイツ国民自らが決めるべきだとの考えが強くなっている。そして、地方選挙の結果、率先して難民受け入れを表明したメルケル首相率いるキリスト教民主同盟は右派政党に敗れている。

 17年、ドイツでは総選挙が予定されている。財政危機が進むなかでもEU・ユーロ圏が団結してこられたのは、ドイツの影響力があったからだ。メルケル政権への支持が低下し、ドイツのEU離れが進むとの見方が高まった場合、EU各国にも同様の動きが広がるだろう。 

 すでにドイツ以外のEU加盟国でも、移民の流入が自国民の社会福祉を圧迫し、雇用機会を奪っているとの反感は強い。17年には、フランス大統領選挙やオランダ総選挙も予定されている。ドイツの動向次第では、これまで以上に大衆迎合的な右派政党への支持が拡大する可能性がある。

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