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ポピュリズムの流れを止めるためには、英国が移民を排除しても単一市場にアクセスする特権を受けられるという前例は、なんとしても防がなければならない。もし、EU各国が英国に譲歩すれば、他の国も英国に続けとEU離脱を問う国民投票を実施するだろう。そうなると、EUは分裂に向かい、経済だけでなく社会情勢までもが混乱しかねない。そのリスクを抑えるために、独仏は英国への譲歩を否定し、強硬な交渉姿勢を強調している。
軽視できない政治が経済に与えるリスク
米国の大統領選挙の結果、そして欧州各国での選挙や英国のEU離脱交渉の動向次第では、今まで以上に主要国の自国優先姿勢が強くなるだろう。その場合、世界経済には無視できない影響がおよび、金融市場が不安定に推移する可能性がある。
具体的に懸念されるのは、保護主義の台頭だ。保護主義とは、自由貿易とは逆に自国の産業保護・育成を重視して関税の引き上げなどを進めることをいう。これは主要国の経済協定や市場統合への努力に支えられてきたグローバル経済の流れに逆行する。
28カ国からなるEUが、加盟国間の貿易にかかる関税や数量制限を撤廃し、市場を統合してきたのはその一例だ。そして、アジア・太平洋地域では、日米を中心に世界全体のGDPの36%を占める国が環太平洋パートナーシップ(TPP)協定に参加し、関税の撤廃だけでなく貿易や投資のルール統一を進めてきた。
リーマンショック後、新興国の景気回復や米国の経済の成長に支えられて世界経済が持ち直したのは、各国企業が積極的に海外に進出し、自国外の需要を手にできたからだ。そのなかで保護主義の台頭が抑えられたのは、米国や欧州が国際的な貿易協定の意義を尊重し、グローバル化の重要性を理解してきたからだ。
もし米国でトランプ大統領が誕生したり、EU各国で大衆迎合的な政党が政権の座に就くのであれば、この状況は大きく変わる可能性がある。トランプ氏が従来の主張の通りにふるまうなら、米国は米国のことしか考えず、各国の足並みが乱れ、多極化が進むだろう。欧州では経済統合の意義が弱まり、各国の利害対立が鮮明になるだろう。
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