10月16日、新潟県知事選挙で原発再稼働反対派の米山隆一氏(共産、自由、社民推薦)が森民夫氏(自民、公明推薦)を退け、泉田裕彦前知事の路線を引き継ぐことになった。
その数カ月前、原発再稼働反対を訴える泉田知事が出馬を撤回し、新潟県民の多くが言葉にならない無力感に襲われていた。最後の土壇場で、原発再稼働に危機感を抱いた共産、自由(旧生活の党)などの原発再稼働反対陣営が告示6日前に元民進党の米山氏を擁立し熾烈な戦いが始まった。
その戦いは米山氏の勝利に終わったが、実際の展開は自民対野党といった選挙戦ではなく、原発再稼働に反対する市民グループと、原発ムラ(政府、自民党、経済産業省、東京電力、地元政財界など)、成り行きで自民・公明推薦の森陣営に加担した格好となった地元紙・新潟日報の戦いでもあった。米山氏を支援した市民グループには子供を持つ主婦が圧倒的に多く、どぶ板作戦を展開する市民グループと連携して、共産、自由などの政党が米山候補の組織的支援運動を展開した。対する森陣営は、安倍晋三首相が官邸で自ら森氏に推薦状を手渡すなど、政府が総力をあげた支援体制を敷いた。
そのようななかで特異な動きをしたのが、地元紙の新潟日報だ。発行部数は46万部ほどで、地方紙として全国的にもその名前を知られている。特に原発問題の報道では一貫して東京電力に批判的な記事を展開し、県外でも高く評価されてきた。
しかし、その地方紙がここ数年で変貌を遂げた。その顕著な例が、2015年に発覚した支社報道部長によるツイッターを使った誹謗中傷、脅迫といった一連の事件だ。この報道部長は自分の立場を盾に新潟水俣病弁護団の弁護士を相手に「(ジャーナリストとして)お前の身辺を調べ上げる」と脅迫まがいのことをしていたのが発覚した。
異例の事態
今回も選挙戦直前に、新潟日報は新潟県の第三セクター会社が関与した中古フェリー船購入を問題視した。能力不足で使いものにならない船を購入したとして泉田知事に非難を浴びせ、連日批判的な記事を掲載し続けたのだ。
「それが必要以上に過激な攻撃で、自民党筋が関与し、新潟日報を使った『泉田降ろし』ではないかといった声も聞かれた。さらに、新潟日報は泉田氏に反論する機会を紙面でまったく与えず、それに嫌気がさしたのか、彼は知事選の出馬を撤回するに至った」(マスコミ関係者)