保団連の調査では、当初設定されたオプジーボの薬価(100ミリグラム)は約73万円だが、米国は約29.8万円、英国は約15万円にとどまる。英国では、効果に対して高すぎるとして、さらなる値下げも検討されている。日本での薬価を決める議論は、企業の機密情報を含むとして公開されていない。
小藪氏は「厚労省の担当者の裁量が大きい上、算定の根拠・基準が明らかにされていない。事後的な検証が不可能になっている」と問題視する。
小野薬品はオプジーボでボロ儲け?
オプジーボを販売する小野薬品は、17年度決算での同薬の売り上げを前年比6倍の1260億円と見込んでいる。薬品の研究開発には多額の資金が必要だが、それを差し引いても同社は“ボロ儲け”といえるだろう。患者数が少ない疾患から保険適用されたのは、日本の医療制度の不備を突いた同社の戦略ともいわれている。
薬価の改定は2年に一度のため、本来であれば次回は18年だ。しかし、オプジーボの高額な薬価があまりに問題視されたことから、前述のように厚労省は17年度から「緊急的対応」として大幅な引き下げをする方針を固めた。さらに、18年度改定で本格的な薬価制度の見直しをする方針だ。
もちろん、製薬会社側は猛反対だ。厚労省の意見聴取の場で、日本製薬団体連合会の多田正世会長(大日本住友製薬代表取締役社長)は、「薬価こそが企業経営の要であり、持続的経営の源。ルール変更が頻繁に行われることは、健全な企業経営の根幹を揺るがす事態で、強い危機感を覚える。産業政策の推進のバランスを考えてほしい」と強く反発した。厚労省の担当者も、一方的な引き下げは企業側から訴えられる可能性があると警戒する。
そこで、当編集部から小野薬品に「高額な薬価設定についての見解」や「大幅な値下げが実現した際の訴訟の可能性」などについて取材を申し込んだ。期日までに回答を得ることができなかったため、再度問い合わせると「薬価についてはノーコメント」(同社広報部)「仮定の話については申し上げられない」との反応にとどまった。
新しい薬は、治らない病気を抱える患者にとっては一筋の光明だ。しかし、かつては処方権を持つ医師や、役人、政治家への製薬会社の接待漬けが問題視され、今も製薬会社による研究不正は頻繁に起きている。国民の生命、そして国家財政にダイレクトに影響するからこそ、薬価をめぐる透明性の確保が不可欠だ。
(文=編集部)