日本銀行が2%の物価上昇目標の達成時期を、従来の2017年度中から18年度頃に先送りした。物価見通しも16、17、18年度いずれも下方修正。9月に金融政策の新たな枠組みを導入したが、18年4月の黒田東彦総裁の現在の任期中での達成は難しくなった。そのため、説明責任を問う声が高まっているが、総裁周辺からは「トンデモ」な言い訳も聞こえてくる。
もはやマーケットも日銀政策に薄い反応
金融政策の維持や、物価の下方修正、到達時期の先送りは、すでに織り込まれていた。黒田総裁が10月27日の参議院財政金融委員会で、政策金利について「直ちに引き下げに動く必要性もない」と述べていたほか、10月21日の衆院財務金融委員会で、達成時期について「物価が足元で小幅のマイナスにあることを考えると、修正もあり得る」と語っていたからだ。
実際、今回の決定会合の焦点だった2%の達成時期の後ずれの公表後にもマーケットはほとんど動かなかった。
問題は政策の妥当性だろう。13年4月の大規模緩和の開始以降、達成時期の先送りは5回目になる。9月に従来の量的緩和に加えて長短金利操作を導入したことで、「量」の拡大を重視してきたリフレ派を追求する声も高まっている。
意味不明な岩田規久男副総裁の発言
11月1日の金融政策決定会合後の記者会見では、黒田総裁は一貫して回答を避けた。市場への影響を考えれば立場上、口が裂けても「失敗でした」とは言えないのはわかるが、執行部に反省のかけらもない姿勢が見え隠れする。
顕著なのが、会見に先立つ10月27日の参院財政金融委員会での、“リフレ派の筆頭”ともいえる岩田規久男副総裁の発言。メディアではほとんど取り上げられていないが、市場関係者の間では話題になった。
参院財政金融委員会で、民進党の風間直樹氏に「一貫して量を重視したのに(金利操作に賛同して9月に政策の枠組みを変えたのは)整合的でない」と追及されたのに対し、岩田副総裁は「(マイナス金利も含め)私の考えは、ある意味で進化していったことは認める」と答弁。「ある意味での進化」とはなんなのか、まったく把握できないが、「量と金利は一体」とも主張。聞いている人間には理解不能な回答に終始した。