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トランプ・ブームに大ハシャギする米国民、これから「トランプ不況」に襲われる可能性

文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授
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 今後も人工知能(AI)やモノのインターネット化(IoT)などが、産業界に革新をもたらすとの期待は強い。そうした技術の進歩が、自動車の自動運転技術の実用化など、これまでにはなかった需要を生み出し、経済成長を支えていくはずだ。経済政策が伝統的な産業のサポートに向かうと、技術の革新が進みづらくなる恐れがある。それでは長期的な視点で米国の潜在成長率を引き上げることは難しい。

楽観できないトランプ相場の行方

 
 ひとまず、大統領選挙後の株式市場は堅調に推移し、それがドルの上昇を支えているようにみえる。一方、財政支出が国債の増発につながるとの見方を反映して、米国の金利(米国債の流通利回り)は上昇している。また、財政政策への期待が高まるにつれて、市場では米国のインフレ率が上昇するとの見方も出ている。それを反映して利上げ予想も上昇している。

 金利上昇は、米国経済を支えてきた個人消費の足かせになる可能性がある。特に、自動車、住宅市場の動向には注意が必要だ。8~10月、3カ月続けて米国の新車販売台数は前年同月比マイナスであり、消費下振れ懸念は高まっている。金利上昇を受けて米国の不動産投資信託(REIT)の価格も下落している。徐々にこうした動きが米国経済の先行き不透明感を高める可能性はある。それは、足元の株高、ドル高の修正につながるだろう。

 そうした懸念を抑えるために、トランプ氏は実現可能な政策を進めつつ、有権者の支持をつなぎ留めていかなければならない。それは容易なことではないだろう。上下両院で過半数を抑えた共和党は、伝統的に小さな政府を志向している。一方、トランプ氏は財政出動を重視するなど大きな政府の考えを持っている。政治経験に乏しいトランプ氏が、どのように議会、世論、そして国際社会からの信頼を得ていくことができるかは不透明だ。

 選挙戦のなかでも、トランプ氏の発言には一貫性がなく、前言撤回が続いてきた。大統領就任が決まった以上、これまでのような思慮のない暴言を続けることはできない。もし、次期大統領が世論の支持を取り付けようとして大言壮語を続けるなら、議会の関係がぎくしゃくするだけでなく、支持率も急速に低下するだろう。

 その場合、金融市場では米国の政治・経済への不透明感や不安が漂い始め、ドル安、株安などリスクオフが進みやすい。大統領選の投開票前、多くの投資家はそうしたリスクシナリオを警戒していたはずだ。足元の市場動向をみる限り、そうした懸念はなかったかのような雰囲気も感じられる。今一度、トランプ氏が目指す政策、そのリスクを確認する必要がある。
(文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授)

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