ビジネスジャーナル > 企業ニュース > サムスン、経営危機説のまやかし  > 2ページ目
NEW
前川修満「会計士に隠しごとはできない」

「製品爆発企業」サムスン、経営危機説のまやかし…稀に見る「金持ち企業」の正体

文=前川修満/公認会計士・税理士、アスト税理士法人代表

 2016年7~9月期の売上高は対前年比7.5%減少し、これに伴い売上総利益、営業利益、当期純利益とも下落しています。この先、赤字に転落する可能性もゼロではありません。

 しかし、「業績の悪化」と「経営危機」を一緒くたにするのは正しくありません。経営危機というのは、短期的な意味での倒産の可能性がみられる状態です。それは、決算書データをみるうえでは、まったく見当たりません。

 これに対して、「業績の悪化」は、株価の下落の原因となるものです。確かに、今回の事件では業績が悪化し、大きな株価の下落要因が生じました。これは、確かに大きな要素です。とはいえ、これだけでサムスンの経営は崩壊しません。
 

近著にみるサムスンの素顔

 
 そういう点で、今年9月に出版された『サムスン崩壊』(勝又壽良/宝島社)は注目に値する書籍でした。本書は、サムスンの内部に潜む問題点をえぐり出した書籍です。この書籍に書かれていることは、サムスンをはじめとする多くの韓国企業が抱えている課題でもあり、サムスンが中長期的に克服すべき課題も書かれていました。

「製品爆発企業」サムスン、経営危機説のまやかし…稀に見る「金持ち企業」の正体の画像5

 しかし、どの会社も中長期的な課題を抱えており、なにもサムスンに限ったことではありません。サムスンの場合、今日のような事態に直面したこともあって、経営上の問題点が浮き彫りにされてきたといえます。今後のサムスンは課題に取り組む必要がありますが、現在までの堅実な財務内容をみる限り、短期的には経営危機とは無縁です。

 つまり、サムスンには課題を克服するための十分な時間が与えられています。この先、サムスンが前出『サムスン崩壊』で指摘された課題を克服することを祈ってやみません。
(文=前川修満/公認会計士・税理士、アスト税理士法人代表)

前川修満/公認会計士・税理士、アスト税理士法人代表

前川修満/公認会計士・税理士、アスト税理士法人代表

1960年石川県金沢市生まれ。同志社大学商学部卒業。公認会計士・税理士・日本証券アナリスト協会検定会員。澁谷工業株式会社、KPMG港監査法人(現・あずさ監査法人)を経て、1992年に公認会計士・前川修満事務所を開業。2006年にはアスト税理士法人を設立し、代表社員に就任。これまで、数多くの経営者や会社員に、セミナーや書籍を通じて決算書の読み方を解説してきた。決算書を通して企業の「裏の顔」を見つけ出す方法とその面白さを知ってもらいたい、との思いから2015年に『会計士は見た!』(文藝春秋)を執筆。『やっぱり会計士は見た!―本当に優良な会社を見抜く方法』は、決算書から「裏の顔」を見出す手法をいかし、優良な会社をいかに見抜くか、さらにそこから日本企業が今後何をすべきか、という視点で著した。

「製品爆発企業」サムスン、経営危機説のまやかし…稀に見る「金持ち企業」の正体のページです。ビジネスジャーナルは、企業、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!