運営会社の株式会社ニュー・オータニは国内に14ホテル、海外に2ホテルを運営し、2016年3月期の連結売上高は673億9500万円。ニューオ―タニ東京の場合、近年5対5で推移してきた外国人と日本人の宿泊客数比率は、今年10月に6対4と外国人客が上回り、最終的には、5:5になった。
いまさらインバウンド対応を講じなくとも、傍目には現状で十二分に集客力を発揮できるようにも見えるが、東京五輪に向けて要所要所にテコ入れを実施している。
昨年末には3~4人だったコンシェルジュの人員を倍増し、「全員が最低2カ国語に対応できる」(広報マネージャーの岩崎州彦氏)体制を固めた。さらに日本産の食材やワイン、日本酒を望む外国人客が増えてきた傾向を受けて、生産者とのパイプを拡充し、仕入ルートの安定化を図ったほか、販促紙の多言語翻訳、客室のブローシャー刷新などに着手した。
正月には東京と幕張で日本の正月体験として、日本庭園で鷹を飛ばしたり、書き初め、和太鼓、江戸職人の実演など100イベントを毎年開催する。また昨年から春先に日本庭園で桜祭りを開催し、よさこい祭り、花魁道中などで外国人客の満足度向上を図った。
今年4月からはニューオータニ館内の直営コーヒーショップ「SATSUKI」の朝食バイキングを刷新し、従来の3300円を5000円に値上げした。朝食バイキングは健康と発酵をテーマに「新・最強の朝食」と銘打ち、「ピエール・エルメ・パリ」のヴィエノワズリーやヨーグルト、イベリコ豚の骨付きハム、玄米卵を使用したオムレツ、ニューオータニ専用の畑で収穫した野菜の無農薬サラダ、新潟県産の有機コシヒカリを観音温泉水で炊き上げるご飯、スーパーフードでカスタマイズできる「ヨーグルトバー」、無農薬で育てたピタヤのシャーベットなどを提供している。
岩崎氏は「ロンドンやパリの一流ホテルの朝食バイキングは一人当たり約7000円です。当ホテルもグローバルスタンダードに近づけました」と話す。
焦点は21年以降
だが、こうした施策もさることながら、東京五輪に向けて継続的に注力するのはサービスの質向上である。参考にするのは宿泊客からフィードバックされる「コメントレター」で、これを各部署に配布し、改善策を打っている。