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片山修のずだぶくろトップインタビュー 第5回 斉藤惇氏(KKRジャパン会長)前編

経営危機だった日立と東芝、明暗の分かれ道…日立は再建で過去最高益、東芝は存亡の危機

構成=片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

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片山 日本では、平社員が課長、部長、常務、専務と出世の階段を上って、生え抜き社長になるケースが圧倒的に多い。こうした、いわゆる“サラリーマン社長”の欠点はどこにありますか。

斉藤 サラリーマン社長は、多くが先輩がやった以上のことはやらない。失敗したときのことを考えるからです。というのは、日本社会は先輩がやったことで失敗しても許すけれど、新しいことに挑戦して失敗するとむちゃくちゃに叩きますからね。

片山 リスクを避けるようになるわけですね。

斉藤 そうです。それから、サラリーマンの延長で社長になると、在任期間がだいたい4年とか6年。長くて8年と短い。10年から20年の欧米に比べると、はるかに経営が短期志向になります。

片山 一般的に、欧米企業は短期志向、日本企業は長期志向といわれがちですが、じつはそうではない。サラリーマン社長は自らの在任期間に結果を出そうとするあまり、短期志向になるということですね。

斉藤 名経営者として知られるジャック・ウェルチ氏は、GE(ゼネラル・エレクトリック)のCEOを20年間務めました。本当に会社の将来を考えた経営をしようとしたら、とても4年や5年ではできませんからね。

片山 日本企業のサラリーマンあがりの社長では、20年は務められない。そうなると、自分の在任期間中だけ業績がよければいいと思ってしまう。

斉藤 それから、もちろんみんながそうではありませんが、日本企業のサラリーマン社長は、社長になったらその後のことを考える。会長、相談役になって、80歳まで専用車と秘書と個室を持ちたい。そんなことばかり考えて、生産性向上やグローバル戦略を練るといった本業は、二の次になる傾向があるのですよ。

片山 はっはっは。おっしゃることはわかります。

斉藤 まあ、そうじゃない人だってたくさんいますから、こんなことを言うと失礼だ。しかし、不祥事で世間を騒がすような会社は、そうですよ。

高額報酬批判は正しいのか

片山 米国でプロの経営者市場が成立していることは知られています。一方で、日本に経営者の「プロ市場」が成立しないことについては、欧米に比べて社長の報酬が安いことが、言い訳のように指摘されます。確かに、ルノー・日産アライアンストップのカルロス・ゴーンさんが10億円、ソニーの平井一夫さんが5億円と世間は騒ぎますが、米国企業と比較して日本企業のトップの報酬は平均してほぼ10分の1にすぎません。世界一の自動車メーカーであるトヨタ自動車社長の豊田章男さんの報酬は約3億5000万円ですが、「世界一燃費のいい社長」と自嘲しているほどです。

 在任期間中の報酬が低いからこそ、退任後も長く会社に面倒を見てもらわないと、帳尻が合わないというわけですね。

片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

愛知県名古屋市生まれ。2001年~2011年までの10年間、学習院女子大学客員教授を務める。企業経営論の日本の第一人者。主要月刊誌『中央公論』『文藝春秋』『Voice』『潮』などのほか、『週刊エコノミスト』『SAPIO』『THE21』など多数の雑誌に論文を執筆。経済、経営、政治など幅広いテーマを手掛ける。『ソニーの法則』(小学館文庫)20万部、『トヨタの方式』(同)は8万部のベストセラー。著書は60冊を超える。中国語、韓国語への翻訳書多数。

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