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片山修のずだぶくろトップインタビュー 第5回 斉藤惇氏(KKRジャパン会長)前編

経営危機だった日立と東芝、明暗の分かれ道…日立は再建で過去最高益、東芝は存亡の危機

構成=片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

片山 日本はコーポレートガバナンスの指針を、法的な拘束力のあるアメリカ型ではなく、あくまでルールとして適用できる英国型の「コード」として導入しました。斉藤さんは義務化、すなわち法的拘束力のあるかたちで導入したかったとうかがっています。

斉藤 それを実現したかったのは確かです。ただ、実際に会社法を変えようとすると、法務省も絡みますし簡単なことではない。法律の大幅改正となれば、大変重いことになります。

 14年、安倍政権が「新成長戦略」のなかに「コーポレートガバナンスの強化」をうたったので、法律改正は難しいとしても、なんとか指針を示す方法はないかと探りました。すると、コードとして導入する方法がある、となった。結果として、法律ではなく、あくまでプレイヤーは東証で、後ろには金融庁がいるという、現在のかたちになりました。

片山 コーポレートガバナンス・コードが導入されて1年以上がたちますが、企業不祥事は絶えません。現状を、どうご覧になりますか。

斉藤 日本企業の問題は、起こるべくして起こっていると思います。それでも、少しずつ改革を進めている企業の数は増えてきている。コーポレートガバナンス・コードには、73本のプリンシプル(原則)があります。これらのすべては満たせないまでも、50本くらいをアダプション(適用)している企業は、今や80%にのぼると聞いています。

 取り組みに濃淡はあるにせよ、これらの企業は、アダプションした以上はきちんと株主に説明することを求められますから、上場企業については、自然に圧力がかかってくると思います。

片山 スチュワードシップ・コードについては、いかがですか。「機関投資家としての責任ある心がけ」などと意訳されます。機関投資家が、投資先企業の企業価値向上、持続的成長を促すことによって、顧客の中長期的なリターンの拡大を図るためとして、14年に金融庁が策定しましたね。

斉藤 僕はそもそも、大きな銀行や証券会社、生命保険会社などの子会社が、機関投資家として資産運用受託者となることについて、少し疑問があります。つまり、パフォーマンスで競争して大きくなるならいいですが、販売力にモノをいわせている場合、投資家が犠牲になっていることがあるからです。

 もっとも、日本には、投資家に限らず消費者が犠牲になっているのに正論のように聞こえる制度はたくさんあります。米の値段は典型的な例で、もっと安く買えるはずなのに、国が農家を守るから安くならない。

片山 何か対策はありますか。

片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

愛知県名古屋市生まれ。2001年~2011年までの10年間、学習院女子大学客員教授を務める。企業経営論の日本の第一人者。主要月刊誌『中央公論』『文藝春秋』『Voice』『潮』などのほか、『週刊エコノミスト』『SAPIO』『THE21』など多数の雑誌に論文を執筆。経済、経営、政治など幅広いテーマを手掛ける。『ソニーの法則』(小学館文庫)20万部、『トヨタの方式』(同)は8万部のベストセラー。著書は60冊を超える。中国語、韓国語への翻訳書多数。

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