厚生労働省の調査によれば、日本人の成人の4.8%がギャンブル依存症とされている。これは、米国の1.6%、香港の1.8%、韓国の0.8%と比較して高いという。
パチンコは一応ギャンブルでないとされているが、厚労省の調査ではギャンブルとして、国民にとって身近であることが海外よりギャンブル依存者の割合が高い理由となっている。確かに、これだけ身近にパチンコなどのギャンブル場がある国は珍しい。カジノがなくパチンコのある日本が、カジノがあってパチンコのない海外より、ギャンブル依存症が高いという事実を受け止めらなければいけない。
このようにカジノのギャンブル依存症を指摘すればするほど、パチンコのあり方が議論になってくる。
ギャンブル依存の問題
しかし、パチンコをめぐる利権は深く広い。パチンコ利権にかかわっているのは、たとえば警察官僚だ。犯罪の予防という名目によって、全国管区警察局長ごとに天下りの「縄張り」が決められ、警察官僚の天下り利権にもなっている。
パチンコは大きな産業であるが、脱税の多い業種である。毎年国税庁から公表される「法人税等の調査事績の概要」をみると、法人税の不正発見割合では毎年上位になっている。
警察庁は、パチンコをギャンブルではなく遊戯と位置づけている。明らかにおかしいが、その建前から逃れられない。ギャンブルでないので規制がなく、駅前にも平然と店舗が営業している。外国人から見れば、街中にあるパチンコはギャンブルそのものであり、それが規制もなく街中にあることはかなり異様にみえる。
世界中で試みられているのは、ギャンブルを街中から隔離し、管理して国民を守るというスタンスだ。ギャンブルを全廃できないので、次善の策としてカジノを容認しているのだ。
もし、日本でカジノをつくり、そこへの誘導策を同時に実施すれば、街中のパチンコ屋は一気に衰退する可能性もある。パチンコは有力業界なので、政治家にもマスコミにも擁護者が多い。今回の法案に反対する民進党や共産党は、カジノでギャンブル依存が増えるという。しかし、すでにパチンコが野放しにされていることで、ギャンブル依存者が多いのだ。
しかも、民進党の前身である民主党政権はIR法案を推進していた。節操なく意見を変えて自業自得になるブーメランは、もうやめてもらいたい。
(文=高橋洋一/政策工房代表取締役会長、嘉悦大学教授)