先月、動画共有サイト「YouTube」に投稿された動画がインターネット上で物議を醸した。
その動画は電車内の「優先席」付近で撮影されており、優先席に座る撮影者の前に立つ年配男性が映っている。「日本語通じないのか」(年配男性)、「もう一回言ってみろよ」(撮影者)といったやりとりが交わされた後、年配男性が「だから、代わってくれって言うんだよ。席を」と発言していることから、どうやら優先席をめぐり口論になっていることがわかる。
しかし、撮影者は「なんでだよ」「悪いけど、そういう人に譲りたくないわ。残念だったな」と、笑いながら拒否。年配男性が「そこ、優先席ってわかんないんだ?」と交渉をあきらめたところで動画は終了している。
この動画に対して、ネット上では「優先席に座って偉そうにしている撮影者が悪いのでは?」という意見が寄せられている一方、「年配男性も高圧的で失礼に見える」といった指摘も少なくない。35秒の短い動画のため、この前後にどのようなやり取りがあったのか不明ではあるものの、賛否両論が巻き起こっている。この動画を見た20代の女性は、以下のように語る。
「電車に設けられている優先席は、『高齢者や身体の不自由な方、妊娠中の方などのための席』といった認識はあるけれど、『譲らなきゃいけない』と思うとプレッシャーに感じて、空いていても座りづらい。それに、万が一この動画のようなトラブルに巻き込まれたら、と思うと怖いです」
優先席でトラブルになったら?鉄道3社を直撃
ときにトラブルにもつながる優先席だが、各鉄道会社はどのように考えているのだろうか。そこで、JR東日本、京王電鉄、東京メトロの3社に取材を申し込み、優先席や電車内のマナーについて聞いた。
まずは、「優先席とはどのような位置付けで、乗客に対してどの程度の拘束力を持つものなのか?」という質問だ。これに対して、JR東日本広報部の担当者は以下のように回答した。
「優先席は、ご高齢のお客さま、お身体の不自由なお客さま、妊娠中や乳幼児をお連れのお客さまなど座席を必要とするお客さまが安心して快適に列車をご利用いただけるよう、普通列車の各車両に設置しています。すべてのお客さまに安心してご利用いただくために、マナーとして席の譲り合いをお願いしているものです」(JR東日本広報部)
この「譲り合いをお願いしている」という点は、言葉は違えど各社共通しているようで、京王電鉄広報部の担当者も、「優先席につきまして、弊社としてはお客さまにご協力をお願いしているかたちになりますので、拘束力はございません」という回答だった。