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山田まさる「一緒に考えよう! 超PR的マーケティング講座」

ハイスタ、事前告知一切なしで店頭にCD発売…歓喜を呼んだ鮮やか&驚愕のPR戦略

文=山田まさる/インテグレートCOO、コムデックス代表取締役社長

 いよいよ、年の瀬が押し迫ってきた。この時期だから、今年を振り返った話題も多くなる。先週も、ある会合で「山田さん、今年一番印象に残ったPRやプロモーションの事例を教えてください。もちろん、ご自身が関わったものでも、関わっていないものでも結構です」と聞かれた。

 答えは明らかで、人気ロックバンド、Hi-STANDARD(以下、ハイスタ)が10月5日に2000年以来約16年半ぶりとなる4曲入りシングル『ANOTHER STARTING LINE』(ピザ・オブ・デス・レコーズ)の発売に際して、事前の告知(広告もPRも)一切なく、いきなり店頭にCDを山積みにするというサプライズを仕掛けたのだ。その結果、CDショップで偶然発見したファンの「驚き」と「歓喜」の声と写真が、SNSを駆け巡ったという話である。

 実はこの話題は、一緒にテレビの歌番組を見ていた息子たち(高校生と中学生)に教えてもらった。親父は恥ずかしながら、このバンドの存在すら知らなかった。ただ、普段から、“事前告知”や“前宣伝”ばかり考えているわが身には、アタマをガツンと殴られたくらいの衝撃があった。そして、このプロモーションを仕掛けた彼ら(ハイスタ)の真意を確認したくなった。

「自分たちのアルバムを確実にファンに届けたい」「店頭に足を運んで、手に取ってもらいたい」、そう考えた結果、いきなり店頭に並べるというサプライズ演出に至ったのだという。情報過多で、音楽配信が当たり前の時代だからこそ、鮮やかに決まった一撃であった。

カスタマーファースト

 10月以来、私は好んでこの事例をセミナーなどでするようになった。テーマは、「誰に最初に情報を届けるべきなのか」ということだ。

“二昔前”は、「まずはメディア(テレビや新聞などのマスメディア)に情報を伝えろ」といわれた。マスコミのフィルターを通して、世の中に「ニュース」は提供されていた。そして、そこから情報が広がっていくことが、とても効果的だったからだ。今もその名残として、記者クラブなんて装置もある。現在でも、まずはマスコミに情報を伝えるべきだという意見もあるだろう。

 10~15年ほど前から、情報伝達の手法のデジタル化が一気に進むと、消費者に影響力を持つ人物たちに情報を伝えることが重要だといわれるようになった。必ずしも新聞やテレビを介さなくとも、ネット(主にブログやSNS)を通じて消費者に影響を与える彼ら“インフルエンサー”に情報を提供することで、マスコミより先に、ネットで話題や評判づくりを行う。まず、その関心を持っていそうな情報感度の高い人たちへ最初に情報を届ける。マスコミに伝えるのは、その後でいい。そんな意見が主流となってきた。

山田まさる

山田まさる

株式会社インテグレートCOO、株式会社コムデックス代表取締役社長

1965年 大阪府生まれ。1988年 早稲田大学第一文学部卒業。1992年 株式会社コムデックス入社。1997年 常務取締役、2002年 取締役副社長就任。2003年 藤田康人(現・株式会社インテグレートCEO)とB2B2C戦略の立案に着手。2005年 食物繊維の新コンセプト「ファイバー・デトックス」を仕掛け、第2次ファイバー・ブームを巻き起こした。同キャンペーンは、日本PRアワードグランプリ・キャンペーン部門賞を受賞。2007年5月、IMC(Integrated Marketing Communication)を実践する日本初のプランニングブティックとして、株式会社インテグレートを設立、COOに就任。2008年 株式会社コムデックス 代表取締役社長に就任。同年「魚鱗癬」啓発活動にて日本PRアワードグランプリ・日常広報部門最優秀賞受賞。著書に『スープを売りたければ、パンを売れ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『統合知~“ややこしい問題”を解決するためのコミュニケーション~』(講談社)、『脱広告・超PR』(ダイヤモンド社)がある。


株式会社インテグレート

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