コストダウンの真相
3施設が大幅に整備費用を減額した理由は、主に入札差金や予備費が圧縮されたからだ。入札差金とは、東京都が業者に依頼する際にあらかじめ計画していた予算に対して業者が異なる数字で落札した場合に発生する差額をいう。東京都は3施設の予算を多めに見積もっていたが、施工業者による落札金額はそれを大きく下回った。そのため、施設に計上していた予算が余った。その金額が、縮減された格好だ。
予備費とは追加工事などが発生した際に東京都が業者に支払う予算のことで、これらも工事が進んだことによって、多く計上しておく必要がないことが判明したために縮減された。
つまり、都政改革本部が縮減したと成果を謳う約420億円は、もともと多く見積もられて計上されていた金額にすぎない。これは工事が進めば、自然とその金額に落着する。決して、小池知事だから縮減できたわけではないのだ。
それでも「行政としては不測の事態に備えて予備の財源は確保しておきたいという気持ちが働きます。入札差金にしても予備費にしても、小池都知事が改革チームを立ち上げなければ、そのままになっていたと思います」と、担当部局は縮減された420億円は小池都政の成果だと強調する。
4者協議後の翌日となる12月22日の会議で、都政改革本部の調査チームは「3兆円超えのリスクはかなり下がった」と総括し、活動の終了を宣言した。
しかし、都政改革本部で縮減された整備費用は、あくまでも現在の数字にすぎない。仮に資材費が高騰した、作業員の労働賃金が上昇した、円安の影響という外的要因によって、再び予算が増額する可能性がなくなったわけではない。気を許せば、また再び予算は青天井に膨らんでいくだろう。
このまま、東京五輪の開幕を無事に迎えることはできるのだろうか。
(文=小川裕夫/フリーランスライター)