「こうした『おとり広告』は、少なくとも去年7月から今年6月にかけて常態化していたとみられます」(12月21日、関西テレビ)
「去年7月から1年間、同じ内容のチラシを使っていて同様の『おとり広告』が行われていた可能性があるということです」(12月21日、毎日放送)
毎月恒例のセールで、しかも3店舗同時の1日中開催されるセールである。仕入れなければならない神戸牛は相当な量に違いない。しかも、どうも「前日まで販売していた神戸牛を、当日だけ安く売る」という方法ではなく、このセール時だけ別途仕入れて販売する方法であったようだ。
そうであれば「仕入れる量はどのくらいにするのか」「3店舗への配分はどうするのか」ということなど、かなり綿密な調整をしなければならないはずだ。それを、近畿地方ではトップクラスのイズミヤともあろう小売業が「2月13日だけどんぶり勘定でノーチェックだった」というのは信じがたい。たとえ常態化していなかったとしても、「こんなにもずさんな管理をしていたのか」と驚かされる。
常態化を疑う報道については、イズミヤ人事総務部は次のように否定する。
「昨年の7月から本年の6月までの神戸牛の仕入れ伝票を確認した結果、2月13日のチラシ掲載日以外は、定期的に神戸牛の仕入れがあったことは確認がとれております」
なぜ公取委は摘発できたのか
もう一つ、立証が難しいおとり広告を「公取委はどうして摘発できたのだろうか」という点である。
おとり広告のように「なかったことを証明すること」は、意外とやっかいなものだ。偽装表示などで、行政側が立ち入り調査に入るには、それなりの証拠がなければ実行することはできない。単なる噂や少数の消費者の訴えだけでは、とても踏み込むことはできない。
偽装表示のように「表示と現物が違うこと」は、DNA鑑定などで証明しやすいが、販売していなかったということは、よほど多くの人間が訴えないと証明できない。おとり広告の商品は、通常販売しているものを「その時だけ安くする」ことが多いので、仕入実績はあるものだ。仕入実績があるものが、いつ、いくつ売れたのかは、内部の販売実績資料を確認しなければわからない。
当局が「仕入実績がない」という内部資料を入手したから調査に踏み切った可能性もあるが、信ぴょう性が高くない限り、立ち入り調査はできない。立ち入り調査をして「何も問題ありませんでした」というわけにはいかない。調査された側の信用問題に発展する可能性があるので、当局はどんな場合でもかなり慎重に調査を進めている。