イズミヤの管理体制に疑問
さらに、イズミヤの管理体制に大きな疑問を感じる。同社は「チラシの内容と現物の確認が不十分だった」としているが、1年間も同じようなセールを実施しているのに、「どのブランド牛がどのくらい売れたのかをまったく把握していなかった」というのは信じがたい。チラシのメイン商品が、広告の効果でどのくらい売れたのかを把握していないとは、どんな売り上げ管理をしていたのだろう。広告商品がどのくらい売れたのか、それによって次回はどんな商品でセールをしたらいいのかなど、販売戦略上「目玉商品の売上を把握すること」は必須のはずだ。
イズミヤは「牛肉商但馬屋に対し同社の店舗の売上額に一定の比率を乗じた額を仕入代金として支払う旨の契約を締結し、一般消費者に食肉等を販売している」(消費者庁公表資料より)が、通常、何が売れたのかはPOS(販売時点管理)データで把握することができる。仮に「POS上では和牛という大括りの売上しか管理していなかった」とすると、月に一度の大イベントを総売上だけしか把握していない、どんぶり勘定だったことになる。大手小売業の販売管理としては、あまりにも情けない。
どんぶり勘定だったとしても、何を仕入れ何を販売したかを把握することはできる。小売業は、店舗で仕入れて販売された国産牛の個体識別番号を管理している。法律上(牛肉トレーサビリティ法)義務付けられているものだ。どんな国産牛が、いつ入ってきて、いつ販売されたかは管理されているので、簡単に把握できる。
イズミヤは「2月13日の神戸牛の仕入れ・販売が3店舗とも0だった」ということを、本当に把握していなかったのだろうか。仕入及び販売が0だったことを把握していても、誰も何の違和感も持たなかったのだろうか。
こうした疑問について、イズミヤ人事総務部は当サイトの取材に対し、次のように回答を寄せた。
「売上把握の面におきましては、国産黒毛和牛や国産交雑牛などの品種別や用途別、部位別で売上実績を管理しており、そういった種別の売上実績の把握はしているものの、神戸牛など産地やブランド別では売上実績を管理していないため、ご質問にあります、どのブランド牛がどのくらい売れたのかいうのは把握しておりません」
イズミヤともあろう企業が「あまりにもお粗末」といわざるを得ない。
(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)