日本経済、「好調」局面突入の兆候…衆議院解散総選挙→自民勝利でさらに景気上振れ
先にみたとおり、昨年の日本の経済成長率は3期連続のプラス成長であった。しかし、景気の実感を決めるのは民間需要がメインであり、円高・株安の影響から年度前半は個人消費と設備投資が芳しくなく、少なくとも昨年前半は企業や家計の心理が冷え込んでいたことがわかる。
そんななか、明るい材料は個人消費である。株価の底打ち効果も出ている可能性があり、財布の紐の固さをみる「消費者態度指数」は改善傾向にある。
消費税再増税の延期も来年度の景気に追い風になる。さらに、政府は複数年にわたり28兆円の景気対策を予定し、対策は国内総生産(GDP)を今年度0.2%、来年度0.3%程度押し上げると試算されている。景気対策がない場合と比べ、来年度のGDPは累積で0.5%上がることになり、金額にして2.5兆円の押し上げ効果になる。年明けには今年度2次補正予算の経済対策4.5兆円の効果も出てくるはずである。
今年度の春闘賃上げ率はプラス圏を維持したが、伸びは鈍化した。今期の企業業績が悪化することや、生鮮食品を除く物価が下落していることからすれば、来年度はプラス幅が縮まる可能性が高い。
海外経済も改善
一方で個人消費が底堅い背景には、自動車や家電などの耐久消費財がある。耐久消費財は09~10年度にエコカー補助金や家電エコポイントを受けて好調だった。内閣府の消費動向調査によれば、家電や車の平均使用年数は7~9年であることからすれば、今は買い替え時期が到来しつつあるため、賃上げ率が鈍っても底堅い動きが続くとみる。
9月以降の主要国の製造業景況指数は米国、ユーロ圏、日本、中国がいずれも改善している。製造業景況指数は最も先行するデータであり、2017年にかけて海外経済が良くなると予測できる。
輸出の回復力が弱かった要因は急激な円高にあるが、現在は円高是正の局面に入りつつあり、2017年にかけて1ドル=110円台以上が定着する可能性もある。事実、鉱工業指数を見ると12~1月にかけて増産計画となっており、海外経済の持ち直しを反映していると推察される。
こうしたなか、上振れシナリオとしては安倍首相が衆議院解散総選挙を実施し、自民党が勝利することである。長期安定政権となれば歴史的に景気が良くなりやすくなり、自民党が勝てばマーケットは好感するだろう。さらに解散総選挙となれば、景気対策を実施する可能性があり、そうなれば17年度の成長率も1%を大きく超えると期待できるだろう。
(文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト)