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トランプ米国第一主義、批判は間違っている可能性…好況到来か、すでにほぼ完全雇用状態

文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授
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 12月の雇用統計を見る限り、雇用の質は徐々に改善しつつあるようだ。まず非農業部門の雇用者数は15.6万人増加し、過去2カ月間の雇用者数も上方修正された。より広範に失業動向を把握する指標(U-6、職探しを諦めた人や、やむを得ずパートタイム就業を強いられている労働者を含んだ失業率)でみると、失業率は9.2%と8年半ぶりの水準に低下した。週間の新規失業保険申請件数を4週間の移動平均でみると、失業保険を新たに申請する件数は減少傾向にある。

 ここから、米国の労働市場の需給が改善していることがわかる。そして、時間当たりの平均賃金は前年同月比で2.9%増加した。以上より、米国の労働市場では雇用の伸びと賃金の増加が同時に進み始めたと評価できる。この傾向が続くかが今後の焦点だ。

短期的に無視できないトランプノミクスの影響

 
 これまで米国経済は金融政策に支えられてきた。そして、労働市場は徐々に完全雇用に近づいている。過去の景気循環に照らしても、米国の景気回復は徐々にピークに近づいている可能性がある。この状況のなかで一段の景気回復を実現するためには、政府がイノベーションを重視した構造改革を進め、需要を喚起することが欠かせない。この問題を考えるとき、トランプノミクスは決定的に重要だ。ただ、各方面で指摘されている通り、トランプ次期大統領の政策、政治手腕は不透明である。ここでは短期的な影響に焦点を当てる。

 米国では、雇用以外の経済指標も全体的に良好だ。製造業、非製造業の景況感は、景気の拡大と後退の境目といわれる50を上回っている。それに加え、ニューヨーク連銀などの地区連銀が公表する製造業の景況感も改善している。企業セクターに加えて、消費者信頼感指数は上昇し、家計心理も好転している。

 選挙戦のなかでトランプ氏は、保護主義色の強い通商政策を念頭に置き、米国経済の成長率を2%程度から4%程度に引き上げると主張してきた。そして大統領選挙後、ソフトバンクの孫正義社長が訪米しトランプ氏に今後4年間で5万人の雇用を創出すると約束するなど、大手企業は米国での投資、雇用を表明してきた。

 現在、トランプ次期大統領はツイッターを通して、大手企業が米国内での生産活動を重視し、雇用や投資を拡大すべきだと“口撃”している。トヨタ自動車に対して、同氏はメキシコでの工場建設計画はあり得ないと批判し、米国向けの製品を海外で生産するなら高関税を課すと警告した。9日には豊田章男社長が米国での投資額を増やすと述べるなど、今のところはトランプ氏の考えを受け入れる企業が多い。

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