その後、シンガポールに移住して、日本でのビジネスを続けた。13年12月にiemoを設立したが、1年もたたない14年10月にDeNAに売却し、DeNAの執行役員に就任したのである。ベンチャー起業家が、「ホップ・ステップ・ジャンプ」の三段跳びの跳躍を見せた格好だ。
草創期から支えた経営チームが解体へ
守安社長は12月7日の記者会見で「成長を優先し、管理や運営の体制の構築ができていなかった」と述べた。その場では辞任を否定したが、業界では「引責辞任は避けられない」という見方が広がっている。
キュレーション事業の主要サイトを再開できなければ、50億円をドブに捨てたことになる。買収の経緯も「週刊文春」が指摘したように不透明だ。南場氏が愕然としたという、WELQをなぜ立ち上げたのかもはっきりしない。
第三者委員会の調査報告書の提出を受けて、守安社長は辞任を表明するのではないかと見る向きが多い。
南場氏は1999年、経営コンサルティング会社・マッキンゼーから独立、DeNAを設立した。草創期のDeNAを両輪となって支えた人物が春田真氏と守安氏だ。
春田氏は京都大学法学部出身。00年2月、住友銀行(現・三井住友銀行)を退職し、DeNAに転職。財務管理部門を担当。11年6月、南場氏が病気療養中の夫を看病するため社長を辞任した際、DeNAの会長に就いた。
11年12月、プロ野球球団、横浜DeNAベイスターズの誕生と同時に春田氏はオーナーに就任。南場氏が現役復帰したのに伴い、15年6月、春田氏はDeNAの会長と球団オーナーを退いた。
DeNAを去った春田氏は16年2月、人工知能(AI)を使ったコンサルティング事業を行うベンチャー、エクサインテリジェンスを設立した。
一方、守安氏は東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻修了のエンジニア。日本オラクルを経て1999年、設立したばかりのDeNAに入社。屋台骨となるモバゲーを事業開始当時から担当してきた。11年、南場氏が経営の第一線から退いたのに伴い社長に就いた。
それまでは社長の南場氏、管理部門の春田氏、モバゲー部門の守安氏の3人の経営チームがDeNAの経営を牽引してきた。
南場氏が経営の第一線から退いて以降は、守安氏が南場氏の後継者として経営を引っ張ってきた。ところが、キュレーション事業の買収で大きく躓いた。
守安氏が引責辞任する事態となれば、南場氏が社長に復帰して信頼回復に努めることになると考えられる。
(文=編集部)