パナソニック津賀社長が激白、「パナソニックの常識破壊」改革と100年成長戦略の全貌
一方の白物は、グローバルに一律の価値観は通用しない。逆に、各国のお客さまに寄り添って暮らしをサポートしたり、お客さまや商品に対して丁寧にケアして初めて買ってもらえる。つまり、AV機器のように投資規模にものをいわせることはできないんです。
片山 わかりやすくいえば、グローバル・ビジネスのAV機器に対して、白物は地域密着。AV機器は大量生産型、白物は少量多品種型ですね。
津賀 そこに、パナソニックの勝機があります。ASEAN諸国や中国には50年以上前から進出しており、各国のライフスタイルや商習慣にある程度は通じていますし、ブランドもそこそこ浸透している。十分に戦えるんですね。
ただ、ヨーロッパの文化にはなかなか入っていけない。国をしぼってじっくりと、お客さまに寄り添ったビジネスを展開していきます。
片山 現地のニーズを、いかに商品開発に還元するかとなったとき、従来通りの日本主導の開発体制は通用しない。現地開発ですか。
津賀 そうです。マレーシアやベトナムから、すでに動き始めています。ローカル人材主体に変えようとしていて、効果が出始めたところですね。
ほかにも、例えばインドでは現地に適した商品を開発するより先に、インド人によるマネジメント体制をつくりました。今後、工場など設備投資を増やしていきます。インドに工場を整備すれば、生産した製品は、さらに西の中東やアフリカ大陸など、将来の大きなマーケットに回せます。それを目論んで、地域ごとに時間差をつけながら、現地法人のレベルアップを図っているところです。
片山 問題は、現地の人材をいかに使うかではないでしょうか。
津賀 もう、そこに尽きますね。日本人が上ではなくて、現地の人がうまく働けるように日本人が支援する。日本人の役割はサポートです。ローカル人材がトップにならないと、みんなやる気が出ませんからね。
従来の人材育成モデルの限界
片山 ASEAN諸国や中国はリーマンショック以降、急速に台頭してきましたが、現在も絶えず変化している。先日、仕事でフィリピンに滞在した際、その活気というか、パワーに驚きました。1億の人口があり、かつ出生率は3.0を超える。従来の観念では通用しない領域ができつつある。そこへ切り込んでいける人材を、いかに確保するか。
津賀 パナソニックは従来、日本人の定期採用で多くの若い人を採り、定年まで働き続けてもらってきました。彼らは、「今度はこの仕事を」と言えば器用に仕事を変え、「アフリカへ行って」と言えば行ってくれ、「次はフィリピンへ」と言えば従ってくれた。パナソニックの発展は、彼らに支えられてきたんですね。