しかし、それを実戦で活用するとなると、止まっているボールを打つわけではない。そして相手のあることだ。速く、強いボールを打たなければ相手を負かすことはできない。遠くに打たれたボールを拾って打つには、素早い判断力や速く走れる瞬発力が必要だ。ストロークを打つという技法を実戦で活用するには、それを駆使する、できる体力が必要なのだ。
「皆さんが求められているのは、ラリーをできるレベルではないでしょう」
質問者を私が鼓舞した。
「皆さんは経営幹部であり、近い将来は経営者たるべき方々です。学生テニスのプレイヤーでいえば、体育会に所属する競技者として第一線で戦いに参加しています。期待されていることは、そしてご自身が目指すべきことは大会に参戦して勝ち上がる強さのはずです。それには、スキルとそれを駆使できる体力が必要なのです」
アクションプランを思いつける「経営体力」とは
全社戦略や部門戦略を立てるにあたり、「経営体力」が大きく影響するのはどんな部分なのか。
「戦略カード」を駆使して展開する「シナリオ・ライティング技法」には次の5つのステップがある。
1.目標の設定
2.課題の発見
3.解決策の策定
4.派生問題と対処
5.発表と共有
それぞれのステップで「戦略カード」を使って「一人ブレーンストーミング」をしながら、できるだけ多くの要素を言語化するのが「カード出し」。それが終わったら、優先度による「カード選び」をする。そして次のステップに進んでいく。5つのステップのなかで、「3.解決策の策定」がいわゆる「アクション・プラン」となるわけだ。ここのステップで重要となるのが「思いつき」だ。
戦略策定指導で私がいつも強調しているのが、「今まで当社で採用していなかったやり方、できれば突飛に思われるようなカードを出してください」ということだ。考えてみれば当たり前である。今までの、そして現在のやり方でうまくいかないのである。れで新しく3年戦略を立てよう、ということなので、何か新しい施策を検討しなければならない。ある方から、次のような質問が上がった。
「山田先生が自社事例として示してくれたような、うまい解決策が思いつけるとは思いません」
それはそうかもしれない。でも私があなたの代わりにあなたの戦略を立てるのではない。あなたの戦略とはあなたの「経営体力」の範囲内でしか立ち上がってこないのだ。20名にテニスを教えても、強い子、弱い子が出るのと同じことだ。